第一幕(2)
遥か神話の時代より、人は神々のために祈りの舞を踊ってきた。
美しい舞踏を捧げることで、神から魔法の力を授かり、世界の平和と日々の幸福を維持してきたのだ。旱魃には雨を、洪水には大地の力を用い、幾多の災いを鎮めてきた。この世界では作物を育むのも、人の傷を癒すのも、全て魔法がその助けとなるのだ。
それらの魔法を生み出す舞踏をプリエールと呼び、古来よりその踊り手たちは人々から尊敬を集めてきた。
やがて、王の命を受け、魔法の素質を持つ踊り手たちを集めた一座が出来上がる。それが“光ある者の集いし場所”——リュミエール座だ。
プリエールはここで体系づけられていき、現在の多くの型と演目を持つ形式へと移り変わった。
魔力を持つ者が、正確なステップを踏み、決まった手の動きをすることで、呼応した魔法が発動する。それらを組み合わせた物語を、複数人の踊り手で完璧に舞うことにより、さらに大きな魔法を生み出すことが可能となる。
どの時代の踊り手たちも、より精度の高い舞踏をこなせるよう、稽古に励んできた。『プリエールダンサーは、常に研鑽を積み続けなければならない』という考えから、リュミエール座は舞踏学校と呼称されるようになり、踊り手たちは生徒として所属することとなる。
かつては才能ある者に等しく門徒を開いてきた一座だったが、今は魔力を持つ者の多くは貴族であり、プリエールはいつの頃からか、高貴な血筋の者だけが舞うことができる神聖なものとして扱われるようになった。
現在、リュミエール座に所属する生徒は全て、貴族階級の子供たちに限られた。