06. ペアと六人組
波乱の入学式が終わり、何事もなかったようにクラス移動は進んだ。
生徒たちがそれぞれのクラスへ移動し終わり、自己紹介とペア・六人組作りをすることになった。
各クラス三十名で、ペアは十五組、六人組は五組できる。さて、誰かとペアを作らないとな。
「皆さん、言い忘れましたが、ペアは六人組の中に含まれるようにしてください」
そう先生は言った。
そして自己紹介ができる人から、一人ずつ前に出てきて自己紹介を始めた。
「土野谷萩徒だ。どんな力は教えられない。趣味は小物づくりだ。よろしく」
「日ノ守宇立だ。どんな力かは六人組になった人に教える。太陽が好きだ。よろしく」
「杉浦大輝! 力は光で、趣味は力の練習をすること! みんなよろしく!」
「……深宮紗月、です。……力は教えられま、せん。……趣味は……簡単に教えられるような、ものでは、ないので、話していいと思った人だけ、話し、ます。……よろしく、お願い、します。」
「星野光里です。力は六人組の人に教えます。趣味は天体観測と占星術をすることです。よろしくお願いします」
「歌倉沙良です。力は歌です。歌手やってます。みんな私の歌を聞いてみて。これからよろしく!」
「剣崎光だ! 力は剣道だ! 剣道の全国大会で優勝したことがある! 剣道に興味があったら迷わず僕に相談してくれ! よろしく頼む!」
「井ノ本遠瑠です。力は地です。趣味は、物質が何でできているかを見極めることです。よろしくお願いします」
「月乃矢桜。力はわからない。趣味は読書。よろしく」
「空成優樹です。力は僕が認めた人以外に教えるつもりはありません」
「私は……」
そして全員の自己紹介が終わり、まずはペア決めから始まった。
みんなが僕のところに寄ってきた。さっきのことが関係しているのだろう。
(月乃矢さんと組みたいんだけどな……)
そう思っていた時、月乃矢さんが話しかけてきた。
「ペア一緒に組もう」
「うん、いいよ」ナイスタイミング!
「みんな申し訳ないけど、ほかの人を探してくれ」そうみんなに言って月乃矢さんの手を取った。
それから数分後、全てのペアが決まり、六人組を作る時間になった。僕はさっき月乃矢さんと話し合って、僕に話しかけることなくペアを組んでいた四人に話しかけることにしていた。
「ねえそこの人たち」そう言うと四人以外の人が振り返った。
「えっと、日ノ守くんと星野さん、歌倉さん、井ノ本くんの四人、ちょっといいですか」
すると、
『なに?』
『何ですか?』
と、ペアごとに息のあった返事を返してくれた。
いや、意図して合わせたわけではなさそうだ。こんなに顔を赤くしているのが証拠だ。
「六人組を一緒に作らない?」そう言うと四人は呆気にとられていた。
「なんで僕たちなんだ?」といち早く硬直から開放された日ノ守くんが問いかけてきた。
「みんなが僕に一斉に話しかけてきたのに君たちは僕に話しかけてこなかったからかな」
「お眼鏡にかなったってわけか」井ノ本くんが言った。
「なんだか僕が上の立場みたいになってるんだけど?」
「そりゃあんなに活躍してるんだから。立場が違うでしょ」と星野さん。
そういうの嫌なんだけどな。どうにかして対等な立場になれないかな……
「そうだ! 友達になろう! それなら立場は対等になる」
「まあそうなるが……お前はそれで良いのか。俺達と立場が一緒で」
「立場が違うと嫌だから。それじゃあ友達から始めよう」
「私も友達が良いです!」そう言ってくれたのは歌倉さんだ。
「それじゃあよろしく!」
全ての六人組が作られた。
「リーダーとチーム名を決めてください」そう先生は言った。
「誰をリーダーにする?」そう日ノ守くんは切り出した。
「やっぱり優樹でしょ」
「優樹だな」
「賛成~」
「私も」そしてそのままの流れで僕が意見することもなく、僕がリーダーに決まった。
「なんで僕がリーダーに……」そうつぶやくと「いや、やっぱり僕らを誘ったからな」
『ね~』
「はぁ……まあいいや。それで名前はどうする?」
「う~ん……《シザンサス》とかどう?」
「なにそれ」
「そんな名前の花があって花言葉が”いつまでも一緒に”なんだ。たぶん……」
「いいね」
「いいと思う」
「賛成~」
「大賛成」
「決まりだな」
「それじゃあ先生に言いに行こう!」
これから楽しくやれたらいいな。窓の外を見ながら僕はそう思った。