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26. 決別の時

 アクオイとの戦闘から一週間が経った。僕は戦いから三日後に目覚め、今は体力を回復させている。


 桜は戦闘の後、突如として僕を切り裂き、門を開いた。そしてどこかへ消えたらしい。今もどこにいるかわからないそうだ。


 この数日を過ごす内に、僕は気付いた。この学校の狂気を。

 桜といた頃は夢中で何も感じていなかった。でも桜がいなくなって、よく見ると、全員が敵を倒すことしか考えていない。言葉の通じる相手も出てきているのに、なぜ平和的に解決しようとしないのか、不思議に思っていた。


 そして、重大な決断をする出来事が起きた。



 体力もある程度回復し、学校に復帰したその日、先生は言った。

「桜さんがいなくなってしまったのは残念ですが、皆さんは今まで通り、いえ今まで以上に特訓をしましょう。()()()()()()()()()()()()()()()()

 その瞬間、僕は声を上げていた。

「先生! 話が通じる相手もいたじゃないですか! なんで話し合いで済ませないんですか! そのほうが双方の犠牲も少なくなるじゃないです……か……」

 そう言った瞬間、先生と他の生徒全員の冷たい視線が突き刺さった。なぜそんな目をするのか。そう思った。

「何を言っているのですか、優樹君。奴らは怪物です。すべて殺しておくのがいいでしょう? 頭がおかしくなってしまったのですか?」

「それは先生たち……」それは先生たちの方だ。そう言おうとしたが、

「もういいです。優樹君。座りなさい」そう話を断ち切られた。

 僕は黙って席についた。


「なんであんなこと言ったんだ優樹?」昼休み、井ノ本くんはそう訊いてきた。

「なんでって……」

「別に全員倒せばいいんじゃないの?」星野さんはそういった。みんなもそれに頷いている。

「……狂気だ」やっぱりこの学校はおかしい。狂気の塊だ。

「優樹? どうしたの?」

 もうここまで狂気に染まっているなら、僕にはもう何もできない。何をしても意味がない。

 一呼吸おいて言葉を紡ぎ出した。


「みんな。ここで別れだ」


「……は? どういうことだよ、優樹」

「本当だよ。どこへ行くの?」

「俺達が嫌になったのか?」

「どうして……」

 そう問いかける四人に背を向けた。

「僕は、今の君たちが嫌いだ。今までありがとう。さよなら」

 後ろから声が聞こえた。だが僕は振り返らない。

「……決別」そう、これは決別なのだ。

 僕が僕でいられるようにするための。



 僕は学校を出て裏山に向かった。【越界の扉】をくぐれば、もしかしたら桜がいるかもしれない。もしいなかったとしても、ひとまず狂気からは逃げられる。


 久しぶりに見た【越界の扉】は、前と同じように淡く光を纏っていた。

 だが、光の鎖がちぎれて消えていた。そして門が少し開いている。

(誰かが来たのか?)そう思いながら扉に向かって一歩進めた。

 その時、めまいのような感覚に襲われた。平衡感覚を失い、フラフラと体が揺れる。それと同時に視界が少しずつ暗くなっていく。そして意識も薄れていく。




「…………目覚めよ」どこかから、声が聞こえた。

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