24. 圧倒的な力
刀と拳が激しい音を立ててぶつかる。そのたびに弾き合い、火花を散らしながら何度も何度も激しくぶつかる。一合、二合と刀を振るうたびに剣速は上がり、意識は深みへ潜っていく。
そしてついに、ほんの一瞬だったがアクオイの体勢が崩れた。
「セェェェァァァァァッ!」
その隙を逃さず、全力で刀を振るった。出せるだけのありったけの力を乗せた一撃がアクオイへと迫る。だが――
「ぬるいぞっ!」
振り切られたはずの刃はアクオイに届く前に止められていた。二本の指に挟まれて。
「――――ッ!?」
アクオイが左の拳を固めるのが視界の端に見えた。
とっさに刀から手を離し、後ろへ飛ぶ。その瞬間、左の拳が風を切って放たれた。防御もできずもろに攻撃を喰らった。
脇腹に激痛が走った直後、視界が勢いよく流れていった。いくつかの岩を貫きながら吹き飛び、地面を転がる。
「がはっ……」血が口から溢れて、滴り落ちていく。
「まずは治療だ……」呼吸するたびに激痛が走る脇腹に、治療を施す。創造の力は傷を癒やすこともできるのだ。
しばらくすると痛みが引き、体も動くようになってきた。完治とはいえないが、回復に時間がかかりすぎた。みんなが心配だ。
だがあたりを見渡しても姿どころか、戦闘音すらも聞こえない。探知を使ってみるが、阻害されているのか使えなかった。
「たしかこっちから飛ばされてきたはずだ」探知は諦め、飛んできた方向に飛び続けた。
飛び続けていると最初いた場所へ戻ってきた。だがここには誰の気配もない。
「戦闘で移動したのか?」そう願いたいが……
「いや生きているはずだ」首を振り、頭に浮かんだ最悪の可能性を振り払う。
その時だった。突如背後に強烈な殺気を感じた。とっさに両腕を強化し防御を取った。
衝撃が腕に伝わる。さっきよりは軽く感じるが腕は動かせないくらいに負傷した。
吹き飛ばされ地面に激突し、砂埃が上がる。
周りを見ると全員が地面に倒れていた。気絶しているだけで死んではいない。
良かったと思う間もなく、次の攻撃が飛んできた。防御することもできずに攻撃を喰らい、地面に転がった。
「これで終わりか……弱い、弱すぎる」アクオイは倒れた僕たちに向けてつぶやいた。
「一撃で終わらせてやる」そういうなり、アクオイは拳を固めた。そして恐ろしいほど膨大な力が拳に込められていく。
僕たちはなにもできずにただ……
その時だった。アクオイがハッとして桜の方を向いた。
「小娘っ! お前は何をっ!」
桜を見ると、いつの間にか立ち上がり、何かをつぶやいている。そしてそのつぶやきとともに大量の何かが浮かび上がってきた。それは紅い紅い紅い、血だ。
「解放:血姫」そうつぶやいた瞬間、浮かび上がった無数の血が桜を刺し貫いた。