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19. 全力の一撃

 遊び。つまり今までのこの戦いは彼女にとってただの戯れでしかなかったということだ。

 もうあれを使うしか勝ち目はない。だがこの怪我であれを使えば、死ぬかもしれない……

 その時、パキリという音が聞こえた。見ると彼女の翼が形を失い崩れていった。代わりに出現したのは彼女の背丈を優に超える大鎌だった。

「さあ、殺戮の始まりよ!」

 その言葉が合図となった。


 大鎌は彼女の体格からは予想できない速度で迫ってきた。避けるので精一杯。反撃を考えている余裕なんてない。

「あはっ、あははっ。もっとっ、もっとぉっ!」


 剣に滅びを込めて鎌を迎え撃った。

 剣と鎌がぶつかり合う。激しい火花が一瞬散った。

「がっ……」

 圧倒的衝撃。一瞬で吹き飛ばされ壁に激突した。

(まずいっ。このままじゃ攻撃がっ)


「【獄炎(ヘルフレイム)】!」

 突如魔法が飛んできた。見た目はただの炎だが、その内に秘める熱は溶岩をも超える。

 その魔法は鎌の一振りで掻き消されたが。


「優樹っ、大丈夫っ?」

「なんとか……」

「合わせましょう」

「うん」

 僕は刀を、桜は剣を構える。

 彼女は僕らを見てニヤリと笑った。

「いい。いいぞっ。もっと私を楽しませろっ!」

 そう叫ぶなり突っ込んで来た。

「行こう!」

「ええ!」


 左右から挟み込み、同時に刃を振るう。だがそれも簡単に防がれてしまう。ここまでは想定内だが……

 猛烈な勢いで刃が激突し激しく火花を散らす。衝撃で地面や建物が崩壊していく。


 拮抗状態が永遠に続くかと思われたその時、突然彼女が後ろに下がった。

(なんだ?)

「……欲しい」

「一体何が……?」

「血が……欲しいっ!」


 一瞬で桜の背後に移動した彼女は桜の首筋に噛みついた。

「がはっ……」

 ものすごい勢いで血が吸われていく。桜の体がビクビクと痙攣している。今が絶好の機会だ。だが技を放てば桜も攻撃を食らってしまう。


 その時、桜の口が動いた。なにかを呟き、桜は意識を失った。

 迷っている暇はない、『倒して』と桜が言ったのだ。

 意識を集中し、刀に力を溜める。生半可な威力では彼女を倒せない。僕の全力を込める。さらに範囲は彼女に絞ることで、なるべく桜には当たらないようにし、威力を上げる。

「全ては原初より創造され、全ては原初より無に還す」

 強い輝きを放つ光の球が刀と僕を包みこんでいく。

創滅世閃(リエスティ・ルーシュ)!」

 光が世界を包み込んでいく。その中で何かが変わるのを感じた。


 光は桜を一切傷つけることなく、彼女だけを襲う。

「ウギャァァァッ!!!」

 彼女は叫び声を上げ、逃げようとするがもう遅い。一瞬で光に覆い尽くされて、叫び声も次第に聞こえなくなった。


 彼女から力が抜け、桜から離れた。桜は意識を失ったままで、支えがなくなり倒れた。

 すぐに駆け寄り、呼びかける。

「桜! 聞こえてたら返事して!」

 返事はない。脈はあるし、ちゃんと呼吸もしている。いまは意識を失っているだけだろう。次第に目を覚ますはずだ。


 安心したせいか急に反動が来た。全力の一撃はやはり体には負担が大きすぎたらしい。

 口から熱い何かが溢れてくる。そして意識が遠のいていく。

「ありがとう。優樹」

 優しい声が聞こえた。

 心地よさを感じながら僕は眠りについた。

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