18. 始まった戦い
迫る彼女の周りには血が浮かんでいた。その血が集まり、一振りの剣と化した。刀を抜き、一歩踏み込んだ。
ぶつかり合う刃と刃。全く互角の力同士がぶつかり合い、激しい衝撃が周囲を襲う。周りを巻き込みながら次々とぶつかり合った。
時々斬撃が体を掠るが、互いに致命傷には至らず、決着がつかない。
その切り結びの一瞬の合間を縫って、魔法が放たれた。敵を殪す威力よりも体勢を崩すための速さを重視した一撃。その速度は音速を超える。
だがそれすらも予測していたかのように、ひらりと回避し、お返しとばかりに血の雨を降らせた。上空から音速を遥かに超えて降り注ぐ雨はもはや弾丸。振りかぶっていた刀を止め、降り注ぐ血の弾丸をギリギリで躱す。
だが完全には回避しきれない。いずれ致命傷になってしまうだろう。
(僕と桜の身を守るには……穿たれない壁!)
桜の方へ向かいながら、その発想を元に力を練り上げていく。桜の下へたどり着き、滅びの力を膜にして、頭上に広げる。これでしばらくは攻撃を防げるはずだ。
膜の下で乱れた息を整える。血の弾丸が絶え間なく降り続くため、奥が全く見えない。
その時だった。
視界の奥で凄まじい力の奔流を感じた。けたたましく鳴り響く警鐘が命の危険を知らせる。
「防御は不可能。しかもほぼ即死級の威力。デタラメすぎるだろ……」
「回避も相殺も不可能。ということは……」
「相討ちを狙うしかない」
そういうなり力を溜め始めた。桜も特大の一撃をぶつけるつもりのようだ。
【創滅世閃】は使えない。体への負担が大きく、その後に必ず攻撃を食らってしまうから死ぬ確率が余計高くなってしまう。
一閃と同時に魔法が放たれる。攻撃が血の弾丸を超えていく。
直後に襲い来る斬撃が僕と桜を切り裂いた。なんとか即死は避けられたようだが、傷口から血が溢れ出していく。
致命的な攻撃を食らったのは彼女も同じだったようだ。血の弾丸の雨が止み視界が開ける。その先では彼女が傷口を押さえていた。
「なかなかやるわね……」
そう呟いた彼女から流れ出る血が次第に少なくなり、止まった。
「嘘だろ……」