17. 吸血鬼襲来
桜とのお出かけから二週間が経った時、学校が再開した。それから一週間が経ち、みんなが休みの間の成果を見せ合っている。
僕はいつも通り桜と歩いていた。ちなみに三週間は桜と買い物をしたりした。
その間に愛刀を作ろうと思った。いちいち創造するのは面倒だし愛着がわかない。そして一番の理由は、刀に意思があるとしたら手入れをしたり、いつもともに戦えば、僕の想いに応えてくれると思ったからだ。
「みんな強くなったよね」
「そうだね」
話しながら歩いていると前から四人が歩いてきた。その四人の顔は見覚えがある。
「久しぶり。みんな」
「久しぶり」
「本当だよ! 久しぶりだな!」
「二人が元気そうで何よりだ」
「私たち猛特訓したんだから!」
「精一杯頑張ってきました!」
相当努力したのだろう、みんなからは前よりも格段に洗練された力が感じられる。
そして日ノ守君と星野さんは活発な性格が、井ノ本君と歌倉さんは優しい性格がそれぞれ強くなったようだ。
「どのくらい強くなったのか見せたいよ」
「今までの怪物なら余裕でしょ!」
「まあそれより強い怪物が出てきたらヤバイかもね」
「あはは……今現れたりして」
「あっ、フラグ立った」
「いやいや、そんなタイミングよく現れるわけな……」
ズガァァァンと衝撃と轟音が来た。
「フラグ回収……しちゃいましたね……」
「校庭の方か……みんな行くぞ!」
校庭に着くと、すでに戦闘が始まっていた。数十人が一斉に攻撃を放つ。だが傷一つ負わせられていない。
今までの怪物よりも姿は小さい。だが、纏う威圧感と力の練度は比べ物にならない。
一見人に見えるが違う。紅い目と鋭く尖った犬歯、そして背中から生えるコウモリのような翼がそれを証明している。奴は……
「吸血鬼……」
「強い……」
「ヤバイやつだってことは分かるぜ……」
「強いやつ来ちゃったよ……」
「今までの怪物とは全く違うな……」
「私があんなこと言ったから……」
「いや、それは関係ない」
そう話していると別の声が降ってきた。
「手応えのありそうなやつが二人……いいねぇ……」
その妖艶な声はヴァンパイアから発されていた。
「言葉を喋ったぞっ!」
「なにかおかしいのかしら?」
確かに喋ったって何も不思議なことはない。今までの怪物が喋らなかっただけだ。
「それよりも、そこの二人以外には興味はないの。だからどいてくれないかしら?」
その時、
「隙ありっ!」
と背後から一人の生徒が飛び込んできた。名前は覚えていないが、女性であるが、男女混合の世界大会で優勝してきた剣豪だと聞く。
だが……
「遅い攻撃ね」
ヴァンパイアに向けて振られた剣は勢いよく地面に激突した。
「なっ……」
一瞬で背後に移動したヴァンパイアは生徒の方を掴んだ。その生徒は距離を取ろうとするがもう遅かった。
「いただきます♪」
大きく口を開け、生徒の首に噛みついた。助けを求める手が伸ばされるが、誰も動けない。
やがて救いを求めていた手も力を失っていき、ブラリと垂れ下がった。永遠のように長い数秒が過ぎ去り、ヴァンパイアは生徒から口を離した。
生徒は地面に倒れ、起き上がらない。一応生きてはいるようだが、顔が青白くなっている。
「もう一度言ったほうが良い? 二人以外に興味ないからさっさとどいて」
その言葉には明確な不快と怒りがこもっていた。
「みんな早く行け」
「でも……」
「早く!」
「分かった。気をつけろ優樹」
そう言って四人は離れていく。だが他の生徒の多くははまだ残っている。
「はあ……これだけ言っても分からないとは……もう殺しちゃいましょうか」
そうつぶやいて猛烈な勢いで迫ってきた。
逃げていない人はもう知らない。いまは目の前の敵に集中しなければいけない。
「桜!」
「わかってるよ」
どうやら僕の思っていることを分かってくれていたようだ。
(頼もしいな)
そう思いつつ、迫りくる敵を迎え撃った。