11. 四人バトル
二人の反応が徐々に遠くなっていく。
僕は森の中を駆け抜けていた。目指すはフィールドの中央に位置する巨大な湖。そこに来るはずだ。
すると突然目の前にイノシシが現れた。どうやら偶然目の前に出てきたわけではなく、襲うために出てきたようだ。
走りながら刀を創り、そのまま振り抜く。
イノシシは一刀両断され地に伏した。
(なんだろう? この違和感は)なんだかここにはなにか秘密がある気がする。
だがその答えは出ないまま湖についてしまった。
湖の対岸に桜が髪をなびかせ佇んでいた。どうやら僕を待っていたらしい。
今回使う武器は木刀はない。鉄でできた本物の刀だ。桜も鉄でできた本物の剣を握っている。
コインを創り、指で宙に弾いた。くるくると回転しながらコインが宙を舞う。
そのコインは湖の中央へ向かい、落ちた。
その瞬間、僕達は駆け出した。一瞬で湖の中央まで移動し、刀を振るった。
ぶつかり合う刃と刃。火花を散らし、弾き合った。
僕たちはそれぞれの方法で宙を翔け、ぶつかり合った。
ぶつかり合うたびに水しぶきが上がる。それはぶつかり合うほどに激しくなっていく。
その時、刀がピシッっと音を立てた。次の一撃を放つと、刀はパキンッと音を立てて砕けてしまった。それは桜の剣も同じだった。
距離を取り、弓を創る。三本矢を構えて放つ。桜も魔法を詠唱し、放ってきた。今回の魔法は地系統。岩と矢がぶつかり合い、砕け散る。
間髪入れずに次の矢を放つ。桜も魔法を発動する。それが続く。
突然、状況が変わった。
桜の魔法の発動速度が上がったのだ。だんだんと押し負けてくる。
(大体速度は二倍。短縮詠唱を習得したのか!)
短縮詠唱。詠唱を半分にする高等技術。前に本で読んだことがあるが、五百人に一人出来るかくらいの難易度だったはずだ。それを成功させるとはすごいな。
なんて感心している場合ではない。このままでは押し負けてしまう。ただこれよりも上の速度となると負担がかかり、先に体力切れになってしまうだろう。
「さて、名残惜しいが、終わりにしよう」
その声が届いたのか桜が攻撃を止めた。
僕は刀を創り出した。込める力で壊れないように、今まで以上に強固に。
これから放つのは、僕の全力。これからも僕の切り札となるだろう最強必殺の一撃だ技だ。
この技は負荷が今までとは比べ物にならないくらい高い。その代わり超絶的な威力と射程、特殊能力を秘めている。
「全ては原初より創造され、全ては原初より無に還す」
全ては原初の力のよって生まれ、そして死んでいく。相反する二つの力が混じり合った時、膨大な力が生まれる。その膨大な力は光の粒となって宙を漂う。
光の粒が刀に込められていき、そして最強の技が、今放たれた。
「創滅世閃!!!」
眩い光が世界を包んだ。桜の放った魔法をいとも容易く掻き消し、桜を襲った。
一瞬で桜を退場させた閃光は消えることなく突き進んだ。その先には戦っている四人の姿があった。
こっち陣営の二人は何とか避けられたようだが、桜の陣営の二人は避けられなかったみたいだった。
そして、僕らの勝利が決まった。
「ゲホッ」
大技を使った反動が来た。目の前がぐらぐらして今にも意識を失いそうだ。嫌な予感がして込める力を抑えてよかった。
中央の湖で集合したとき、桜が突然こう言った。
「ねえ、おかしくない?」
「何がおかしいんだ?」日ノ守君が言った。
「バトルが終わったら現実世界に戻るはずなの」
「何らかのバグで戻れなくなった?」
「まずここが仮想世界じゃないのかもしれない」井ノ本君がそう言った。
「何か心当たりがあるの?」
「バトルの途中で怪物みたいな姿を見たんだ」
「ってことは……」
「ここが怪物たちがいる異世界なのかもしれない」
「けどみんな怪物は見たことないよ」星野さんが言った。
「ここが怪物がいない、もしくは少ない場所なのかもしれない」
「でも……」
その時、何かが探知にかかった。その何かは数を増やしていき、しかもまっすぐにこちらに向かってきている。
「みんな隠れて! 何か来てる!」
みんなはすぐに行動に移し、近くにあった岩の陰に隠れた。
「もしもの時は戦闘だな?」
「そうなる。そうならないことを願うけど……」
その時ズドンッと音が響いて振動が伝わってきた。
(来たか……)
僕はもしもに備えて刀に手を掛けた。