10. 大会に向けての特訓
バトルの後、授業に間に合いほっと一息ついていると廊下の掲示板辺りが騒がしくなっていた。
「ねえ桜。なんであんなに騒がしいのか知ってる?」
「わからない。何か重要なことでも貼ってあるのかな?」
「そういうのは普通デバイスに送られてくると思うんだけどなぁ……」
ちょうどその時、メールが届いた。
「えっと……二週間後にパーティ・ペアの大会を行います。全員参加のトーナメント戦です。この二週間は、授業は行わず、それぞれでの練習となります」
「大会に向けて練習しろってことかな……?」
「そうみたいだね。一旦メンバーで集まろう」
メンバー全員に集合をかけるためにデバイスを取り出す。
集合場所は……もし訓練場か闘技場が取れたらいいけど、取れなかったら僕の部屋にしようかな……
抽選に参加し、闘技場に投票したが落選。訓練場に投票しようとすると、画面が固まった。
壊れたのかと焦ったが、少し待つと何事もなかったかのように動き出した。
(ふぅ……壊れてなくてよかった)
再び画面に目を向けると落選画面ではなく、当選画面が出ていた。
バグが起きたのかな? まあ、ありがたく受け取っておくけど……
そしてメンバー全員に闘技場に集合するようにメールを送った。
「それじゃあ行きましょ」
「うん。そうだね」
全員が闘技場に集まり、大会のルールなどを確認した後に訓練方法を考えることにした。
「大会は個人部門、ペア部門、パーティー部門の三つがある。もともと個人部門はなかったみたいだけどね。全部トーナメント戦で行われて、場所は仮想空間で行われる」
「何で仮想空間なのかな?」日ノ守君は首を傾げた。
「確かに!」星野さんもうなずいている。
すると歌倉さんが「確か死亡事故があったとか何とか……」と言った。
さらに井ノ本君が「昨日の夜にバトルがあったんだ。喧嘩が原因らしいんだけど、死人が出たらしくて……学校側もバトルで死者が出ることは想定外だったらしくて、バトルは仮想空間で行い、現実世界では行ってはいけないって定めたらしい。そろそろメールが来ると思う」
「なんでそんなことを知ってるんだ?」
「廊下で先生たちが話してるのを耳にしたから」
「まあそれは一旦置いておこう。訓練方法はどうしようか……」
「一人ひとりの長所を伸ばす。短所を補う。両方かそのどちらかを行えばいいんじゃないか?」
「そうだね。とりあえず武器の適正を教えてくれない?」
日ノ守君は盾。
星野さんは魔法。
井ノ本君、歌倉さんは魔術。
ということだった。
「バトルに似た形式で練習してみよう。一対一か三対三、どっちが良い?」
「三対三で良いんじゃない?」
「みんなはそれで良い?」と聞くと、みんなが頷いた。
「それじゃあチーム分けをしよう。くじ引きで決めようか」
箱に入れた棒を引いていく。そして僕と日ノ守君、井ノ本君チームと桜、星野さん、歌倉さんチームになった。
(桜と敵同士になっちゃったな)でも手加減はしない。多分桜もそうするはずだ。
バトルフィールドは正方形になっていて、草原や森、岩場など、様々な地形が広がっていた。
チームごとに対になる角に移動して、それぞれ作戦を立てている。
「どうする?」今回の進行役は井ノ本君だ。
「とりあえず僕は前に出るよ。桜もそうしてくるはずだ」
「なんでそんなのがわかるんだ?」日ノ守君が聞いてきた。
「ん~何となく……」
「まあ、優樹には自由に動いてもらうよ。一番警戒すべきは月乃矢さんだと思うんだ」そう井ノ本君は言った。
「どうして?」
「前に優樹と月乃矢さんのバトルを見たんだ。もう僕らとは次元が違ったよ」
あのときのバトルを見ていたのか。そんなに違うかな……
「そうしたら俺達の相手は星野と歌倉さんの二人になるわけだ」
「ただ俺達では勝てない気がするんだ」
「練度があっちのほうが上だからな」
「けど僕と桜の戦いは多分長引くと思う。それまで耐えられる?」
「負けるかもって言わないんだな」
「自信に満ち溢れてるな」
「まあ負けるつもりはないからね。戦いの前から負けるかもって言ってたら負けそうじゃん」
「ああ、たしかに」
「それじゃあ作戦は決まりだな。優樹が先に突っ込んで、俺達は優樹が戻って来るまで耐える。勝とうぜ!」
「「おう!」」
そしてバトルの始まりを示す鐘が鳴り響いた。