01. 彼女との出会いから始まる物語
僕、空成優樹は高校一年生。
今日も普通に授業をして、友達としゃべって、部活をして、家に帰る……はずだった。
四時間目の授業のとき、突然教室が暗くなった。
なんだろうか、と窓の外を見た。
そこには触手を持った巨大な怪物がいた。
「……は?」と声をあげてしまうのも無理はないと思う。
なにせその怪物はこの校舎くらいの高さがあり、人の顔をしていて、その脇から触手が生えている。しかも一つしか目がなかった。
気持ち悪いし、怖い姿で、怪物と呼ぶにふさわしいと思う。
触手はゆらゆらと揺れ、一つしかない目がギョロギョロと動いている。獲物を探しているかのようだ。
クラスメイトや先生もその怪物を見て、呆気にとられた。
長く感じる一瞬の沈黙。
その後すぐに一人のクラスメイトが「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」と悲鳴を上げた。
それに連鎖してクラス中から悲鳴が上がり、みんなが廊下に向かって一斉に走り出した。
逃げまどい、押し合い、転んだりする音や、怒声や悲鳴が聞こえてきた。
一方僕はというと、その場から一歩も動けずにいた。
怪物は触手を振り回し、校舎を壊し始めた。
ズガァァァァンと校舎が破壊される音が聞こえ、立っていられなくなるぐらいの揺れが僕を襲った。
壊されたコンクリートの破片が飛んできて、慌てて僕は腕で顔を守った。ザクッと切れて血が出たが幸い傷は浅かった。
土煙が晴れ、周りを見まわすと、僕のすぐ隣の壁が壊されていた。
その奥に見えたものを見た瞬間、息が詰まるのを感じた。
そこから覗くのは怪物の触手。つまり怪物の目の前だ。
恐怖で足が動かなかった。
ギョロギョロと動いていた怪物の目が、僕を捉えたように感じた。
怪物は触手を振り上げ、僕に向かって振り下ろした。
その時、なぜか世界がスローモーションに見えた。ただ動けない。ゆっくりと僕の目の前に触手が迫ってくる。
だがその触手が僕に届くことはなかった。
突然光が矢のように飛んできて、怪物の触手を射抜いたのだ。
触手は射抜かれた部分を境にちぎれ飛び、分解されたように消えていった。
次々に光の矢が飛んできた。次々に光の矢が怪物を貫き、怪物の体がちぎれ飛んだ。そしてあっという間に怪物は消滅した。
光の矢を放った人物が、崩れた所から入ってきた。
その少女は僕を見つめてこう言った。
「迎えに来た。世界を救う勇者よ」
伝説として語り継がれる僕達の物語は、ここから始まった。