番外編:我々は現実世界で指輪とかについてちょっと真面目に話し合う。
都内、某ライブハウスのトイレにて
か「おげぇーっ!!」
み「うるさい」
に「大丈夫にゃ?」
か「で……でえじょうぶだ」
に「なんで悟空にゃ?」
み「酔っ払いに理由を求めるな」
か「……なんか、こう……この息絶え絶えな感じ……それっぽいなって……」
に「余裕あるにゃ。心配して損したにゃ」
み「香凜。いい年して、ガキみたいに飲むのやめな」
か「……ごめんなさい」
に「む……この空気、覚えがあるにゃ。二人、喧嘩中にゃ?」
み「別に」
か「違うよ」
に「返事の早さでわかったからもういいにゃ。原因はなんだにゃ?」
み「知らん」
か「わかんない……」
み「……そこはわかってて欲しかった」
か「ごめんなさい……」
に「結構ガチのやつにゃ? 困ったもんだにゃー」
み「にゃー子は困んないでしょ」
に「いや、あーしも話あんだにゃ。1年ぐらいバンド休むにゃ」
か「えっ!?」
み「なんで?」
に「ちょっと子供産むにゃ」
か「えっ!?」
み「なんで?」
に「疑問に思うとこあるにゃ?」
か「だって、にゃー子ちゃん子供の作り方知ってるの?」
に「……」
み「猫の妊娠期間って二ヶ月ぐらいじゃないの」
に「……あーし帰るにゃ」
か「待って! ごめん! おめでとう!」
み「うん。すごい嬉しい。ホントは泣きそう。やばい」
に「……ありがとにゃ」
か「ごめんね、こんな場所でそんな話させて」
に「本当だにゃ。せめて早く服着ろにゃ」
か「まだ洗った服、乾かなくて……」
み「子供の名前考えていい?」
に「駄目に決まってんにゃ……猫の子じゃねーにゃ」
か「にゃー子ちゃんが言うと深いね、それ」
み「深くはないだろ」
に「……なんか空気戻ってきたにゃ。二人とも」
か「まぁ……子供には勝てないよね」
み「まーね。そんな大した理由じゃないし」
か「大した理由じゃなかったの? なんだ」
み「…………」
に「香凜、これ今すぐ謝ったほうがいいやつにゃ」
か「ご、ごめんなさい……」
に「美玲も、意地張ってないで話し合うにゃ。妊婦に仲裁させんじゃねーにゃ」
み「はぁー……そうね。ちょっとこっち来て、香凜」
か「……全裸で?」
み「全裸で」
か「はい……」
に「あーしが出てくからいいにゃ」
か「……で、原因って」
み「指輪の話」
か「……だよね」
み「わかってた?」
か「うん……ほんとは」
み「嫌ならいいんだよ。別に、私は。このままの関係でもさ」
か「嫌じゃない! 嫌じゃないよ……」
み「でも、怖かったんでしょ」
か「……」
み「落ち着いて、ちゃんと聞かせてよ。はぐらかさないで」
か「あたし……わかんなくて。家族、ろくでもなかったから。誰かとずっと一緒って……家庭築くってのが……」
み「うん」
か「あたし、親父みたいなクソ女になるかも。美玲のこと殴ったり、泣かせたりするかも……」
み「それはないでしょ。私の方が強いし」
か「わかってるんだよ、でもさ……」
み「……うん」
か「ごめん、美玲。あたし、部屋出るよ」
み「……わかった。鍵は持ってて」
か「美玲」
み「ん」
み「……ゲロくさ」
か「ごめん」
み「いいよ、あんたのだし。行こ。にゃー子が待ってる」
か「うん……」
に「要するに、美玲がプロポーズ的な意味でペアリングを買おうと提案したら香凜がビビってはぐらかした感じにゃ? そして、いい感じに和解はしたけどこれからの関係はいったん距離おいてお互い頭冷やす感じにゃ? あと途中5秒ぐらいキスしてたにゃ?」
か「全部聞いてんじゃん……」
み「理解度高くて助かるわ」
み「香凜」
か「ん」
み「言っとくけど、私は多分一生あんたのこと好きだから」
か「え……」
み「だから、あんたは自分が思うようにして。私は嫌いにならないから。説教はするけど」
か「美玲……うん」
に「それただのストーカー宣言じゃねえのにゃ?」
(おわり)