番外編:我々は現実世界で酒飲んで青春について駄弁る。
都内某居酒屋にて
か「今さらだけど『けいおん』見た」
に「マジで今さらにゃ」
み「本当に今さらすぎる」
か「だからそう言ってるじゃん!?」
に「とっくに見てると思ってたにゃ」
み「ってか、私らモロにけいおん世代じゃん。どうせあんたのことだから、ロックでアニメなんてチャラくてムカつくとかひねくれたこと言って避けてたんでしょ」
か「いや……実家にテレビなかったから」
に「……」
み「……」
か「あ……まあ、でも、ひねくれて避けてもいた。社会に出てからは」
に「ホッとしたにゃ」
み「それでこそあんただよ」
か「釈然としない……」
か「とにかく何が言いたいかと言うと、あたしもあんな青春したかった!」
み「それはみんな思ってるよ。バンドマンみんな思ってる。でも、誰もそれを叶えた者はいないんだ。だからこそみんな、砕けた夢の残り香を追いかけて今でもバンドなんかやってるんだよ」
に「私情入り過ぎじゃないかにゃ」
か「バンドマンへの風評被害……」
に「っていうか、二人は昔からバンドやってたにゃろ? 青春だったんじゃないのにゃ」
み「にゃろ?」
か「やってはいたけど、あたし以外おっさんだった。いや、いい人たちだったけど」
み「私は女子校でベース弾いてたから、まあ境遇だけはそれっぽかったかな」
に「おー、キラキラしてそうだにゃ」
み「いや。私以外全員メタラーで合わなくて抜けた」
か「どういう確率?」
に「逆に楽しそうだにゃ」
み「私は大塚愛とかやりたかったんだよ……」
か「……じゃあ、今から青春してみねえ?」
に「急にぶっ込んでくるにゃ」
み「青春って何よ、具体的に」
か「ドキドキ……ワクワク……キラキラ……」
に「具体的の意味わかってるにゃ?」
み「……」
に「今の沈黙は多分『私と付き合っててドキドキワクワクしないの?』って思ってるにゃ」
み「思ってません」
か「敬語使うの初めて聞いた……ごめん、そういう意味じゃなくて」
み「わかってるって。夕日に向かって走りたいんでしょ」
に「『けいおん』そんな話だったかにゃ?」
か「夕日ダッシュもいいけど、放課後の部室でキャッキャウフフしたいんだよ」
み「不法侵入で捕まるよ」
か「じゃあそれっぽいとこでいいよ。学校っぽいとこない?」
に「イメクラ?」
み「あんたさぁ……」
か「こないだの宣言通りにぶっ込んできたね」
に「早く品性レベルを落として妖精扱いから抜けたいにゃ」
み「三人でイメクラ行かないでしょ。っていうかイメクラって何すんの。女入っていいの?」
か「興味津々かよ」
か「よく考えたらさ……」
み「うん」
か「バンドって青春じゃない?」
み「気づくの遅い」
か「しかもパンクだよ? 青春ど真ん中じゃない?」
み「そうだよ」
か「そうかー……あたし、青春してたのかー……」
み「よかったね」
か「よかった……えへへ、嬉しい……」
み「……にゃー子、なんで黙って見てんの」
に「膝枕でいちゃいちゃしてる二人を前に、邪魔者のあーしに何を言って欲しいんだにゃ」
み「……ごめん」
か「にゃー子ちゃんの膝行ってもいい? 後頭部がごつごつして痛い」
み「おい」
に「嫌だにゃ。こないだ膝に載せたらゲロ吐かれたにゃ」
か「……ごめん」
み「まあ、なんだ。こういうどうでもいい話もさ、確かに青春だよね」
に「年齢を考えなければにゃー」
か「心は十代だよ!」
み「……あんたは少しぐらい成長しな」