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第94話 アレックスの心配

 フィーネがイーサン殿の手を取り癒しの魔法をかけた。先ほどルイス辺境伯に清浄魔法を使ったばかりで、少し心配になったが、体も心も傷ついているイーサン殿を癒したくなる気持ちは理解できたので、あえて止めることはしなかった。

「聖女フィーネ様、ありがとうございます」

 少し頬を染め、熱の籠った視線でフィーネを見るイーサン殿に、狭量だとは思うが少しイラっとした。

 傍から見れば同じような年の男女だ。ロマンスの一つも生まれるかもしれない…フィーネに限って俺がいながらそんなことはしないと信じている。しかし、イーサン殿はわからなかった。性格がよく、見た目も可愛い俺のフィーネに、弱っている時に優しくされたのだ。俺でなくても心が傾くだろう?

 俺は急かすように、イーサン殿の手からフィーネの手を奪い取った。

「見送りありがとう。明日も早いのでここで失礼するよ」

 イーサン殿が驚いた様な顔で俺を見たが、気にせずそのまま転移魔法で野営テントまで飛んだ。鳥がクックと笑った気もしたがこの際どうでもよかった。兎に角物理的に二人の距離を離したかったのだ。


「おかえりなさい団長。首尾はどうでしたか?」

 マックスが俺たちを見つけて走り寄ってきた。先ほど聞いたことも検討して、明日動かねばならなかった。

「フィーネ、先にテントで休んでいて。出来るだけ魔力を回復しておいてくれ。打ち合わせの後で行くから」

 不安そうなフィーネに出来るだけ優しく微笑んで、テントの方へ背中を押した。フィーネは少し気にしていたが、素直にテントへ向かってくれたのでホッとした。

「何かありましたか?」

 マックスが不思議そうに聞いてきたが、それには答えずそのまま本部テントへ向かった。


 各部隊長を集めて、最終的な打ち合わせをした。先ほど辺境伯邸で起こったことも話し、呪いの対処方法も検討した。呪術に詳しいものを前線近くに配置し、フィーネの補助がいつでも出来るようにした。

 打ち合わせ通りにいけば、明日で決着がつくはずだ。結界魔法も魔力をかなり消費する。何日もかかる場合、違う作戦に変更する。聖女の森一帯に魔物が出没してそれぞれ交戦するため、変更する場合の連絡方法が難しかったが、チャーリーたち学生の間で風魔法を使った通信方法が流行っていて、それを今回試験的に取り入れることにした。各部隊に風魔法の得意な魔法騎士を配置しているので、万が一作戦が失敗した場合は、撤退の連絡を速やかに行うことが出来るはずだ。

 魔力消費を抑えるため、リリアンナ嬢考案の火炎玉も各部隊に配給してある。接近戦には向かないが撤退する際や、遠くの魔物には有効だと思っている。初めての試みなので、これも臨機応変にするしかない。

「以上が明日行うことだ。質問がなければ各部隊に戻り、連絡事項を伝えてくれ」

 部隊長たちを見送り、マックスに本部テントで休むよう伝えると、俺はフィーネの待つテントへ向かった。きっと先ほどイーサン殿にとった俺の態度を気にしているだろう。冷静に考えればイーサン殿に対して大人気ない態度だったと思う。

「フィーネ、入っていいか?」

「はい、どうぞ」

 テントの中に入ると、シンプルなワンピースに着替えたフィーネがいた。手には体力回復ポーションの小瓶を持っていた。ダントン伯爵令息が作ってくれたものだと言っていた。それも気にはなっていた。

「お疲れ様です、アレックス様」

「ああ、フィーネは疲れてないか?明日も早いのに待たせたね。もう休もうか…」


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