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第89話 あなたと共に

「大丈夫かい?」

 寒さのせいなのか、それとも明日の戦いが怖いせいなのかわからない、体の芯まで凍えてしまいそうな気持になって、カタカタと体が震える。

「だ、大丈夫です。ちゃんと覚悟は出来ています。私しか出来ないことから逃げることはしたくないです」

 強がって笑う私を、ぎゅっとアレックス様が抱きしめてくれた。

「それがフィーネの本心?覚悟とか、聖女だからとかではなくて、もっと本当の気持ちを聞かせて。それを押し込めて、そのまま聖女の森に立たせたくない。頼りない私には本音は言えないかい?大丈夫だ、どんなフィーネでも私は愛しているよ」

 更に強く抱きしめられて、緊張していた心が緩んだ。私を誰よりも愛してくれる人がここにいると思えたら、ずっと蓋をしていた不安な気持ちが溢れた。

「ずっと…怖くて…どうして私は、聖女で、なんで…いきなり、魔物と戦うのか…夢で見る魔物は、本当に、恐ろしくて、でも私じゃないと…出来ないって、そんなの嫌だなんて言えなくって……なんで、なんでって考えて、自分でももう訳が分からなくて……逃げたくない、でも…たすけて、怖い、怖いんです……」

 アレックス様は何も言わず、泣きじゃくる私の背中をさすっていてくれた。かなりの時間そうしていて、本当に寒さで凍えそうだと冷静になれたころ、そっと顔をあげてアレックス様を見上げた。目が合ったアレックス様の目元も赤く、薄っすら涙の膜が見えた。

「フィーネ、君のことは私が絶対に守る。今はそれしか言えない自分が不甲斐ないけど、私を信じて欲しい」

「はい、信じています。アレックス様と一緒に戦います」

「ありがとうフィーネ。私の愛しい妖精姫」

 優しく頬にキスされたあと、ゆっくり触れた唇は少ししょっぱい味がした。チルチルはさすがに邪魔することなく、寝ているふりをしていてくれた。


 翌朝キャンベル伯爵に見送られ、さらに私兵50名を加えた魔物討伐隊は辺境伯領の隣の領地に転移した。広い雪原に着くと、先発隊をまとめていた副団長のマックス様が疲れたきった顔で出迎えてくれた。

「あの、マックス様、これ飲んでください」

 私はノア先輩にもらった体力回復ポーションをこっそり渡した。癒しの魔法も考えたが、出来るだけ魔力は温存しておきたかった。

「ありがとうフィーネちゃん。来てくれて助かるよ」

 ホッとしたようにこちらを見て笑ってくれた。ここ何日かは、隣の領地にまで魔物が現れているそうだ。逃げ込んでくる辺境伯領の住民を保護しつつ、防衛線を死守していたらしい。魔物討伐隊はマックス様率いる先発隊50名を含めて、総勢300名となった。

「それでは当初の予定通り明日辺境伯領へ進軍する。今日はこの後、辺境伯領の手前まで移動する。各自休憩後に移動を開始。以上」

 テキパキと指示としながら、動いているアレックス様をぼんやりと眺めていると、マックス様が近づいてきた。

「どうしたのフィーネちゃん」

「えっと、団長をしている時のアレックス様もカッコいいなと思って…」

「おお、いきなり惚気ですか?!疲れているお兄さんにはグッときますね~順調そうでなりよりだよ」

「そんな惚気だなんて……」

 私が真っ赤になっておろおろしていると、背後からアレックス様の気配がした。あっと思っていたら、私の肩を優しく抱き寄せた。


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