第80話 私も愛しています
幸せそうにそう言ったアレックス様に、私も勇気を出して言いたくなった。いざそれを伝えると思うと、心臓が口から出るかと思うほど緊張した。
「あの、私も、愛、しています」
真っ赤になった私をアレックス様がまた抱きしめたが、チルチルがアレックス様の頭を激しく突いたので、すぐに離れてしまった。ちょっと残念だ。
「いい加減にしろ、鳥!…フィーネ、今日はもう遅いので帰るよ。影の情報が入り次第また知らせる。これから忙しくなるから当分は学園にも、こちらにも来られないと思う。でも、何かあったら必ず連絡してくれ。すぐに駆け付けるからね」
名残惜しそうに私の頬に触れながら、アレックス様はそう言って帰って行った。
「ねえ、チルチルはアレックス様が嫌いなの?」
『いや、なんとなく邪魔したなるんや。なんでやろうな』
チルチルは首をかしげながら私の髪の中に埋まって寝てしまった。もしかして鳥が縄張りを荒らされる感覚?寝床を取られる、そんな感じなのかもしれない。
「おやすみチルチル」
次の日に登校すると、チャーリーが私に近づいてきて囁いた。
「今日の放課後、マルコ先輩が部室に来て欲しいと言っていた。俺も行くから一緒に来てくれる?」
「新しい情報かな?わかった、リリーはどうする?」
「今日は母様に早く帰るように言われているから、残念だけど遠慮しておくわ。昼休みに天使先輩のところに行くのよね?それは付き合うわ。一人だとからんでくる人もいるかもしれないからね。チャーリーも付き合ってね」
「わかった」
昼休みに早めに食事を食べ終わり、私たちはノア先輩がいつもいる温室に向かった。全面ガラス張りの温室には、他国にしか咲かない貴重な草花や薬草があるらしい。昼休みにはそこで草花を観察するのが日課だと本人に聞いていた。遠巻きに覗きに来る生徒がいるのだと、嫌そうに言っていた。
「ノア先輩、観察しているところをお邪魔します。あの、聞いて欲しいことがあって」
「ん、フィーネか。告白、ではないな、友達もいるもんな…まあ、仕方ないか。で、何」
「魔物の弱点になる薬草が知りたいのです。このノートに書かれている薬草、その他にも有効な撃退方法があったら教えてください!!」
「は?なんでフィーネが魔物を撃退するんだよ。何かの冗談か?」
「いえ、いたって真面目です。えっと、必要になるかもしれないから?」
「何で疑問形なんだよ。まあ、俺に言えない理由があるのか。おおかた団長にでも頼まれたのか?」
「ええっと、そんな感じです?」
「そこも疑問形なんだな…まあ、いいよ。とりあえず、調べておいてやる。そのノートも借りておいていいか?」
「はい、ありがとうございます!」
「これは貸しだぞ。後で返せよ」
「はい、なにか後でお礼をします。何がいいですか?」
「…考えとく」
リリーたちと一緒に温室から出ると、外は余計に寒く感じた。もうすぐ冬がくる。