第77話 対策会議です
「悪いが、情報部は今後も動向を知らせてくれると助かる。今は公表したくない。然るべき時期は陛下が判断される、それまでは内密で動いて欲しい」
アレックス様が皆の顔を確認するように見た。
「はい、ここまで来たら協力は惜しみません。新しい情報が入り次第、チャーリーを通じてフィーネ嬢に伝わるようにします」
「ああ、頼む。君たちの情報が事実なら、今後は出来るだけ素早く対応しないと手遅れになるかもしれない。巻き込んですまないが、協力してくれて感謝するよ」
「他人事ではないので、当然のことです。魔物が爆発的に増えれば、大切な誰かが犠牲になるかもしれないのですから」
「ああ、その通りだ。絶対に阻止しないといけない」
「フィーネ、すまない。今から陛下に会いに行く。フィーネも一緒に来て欲しい」
情報部の部屋を出てリリーたちと別れた後、アレックス様が手を差し出した。時間が惜しいのか、転移魔法で行くそうだ。王宮近くの門前に転移後、門をくぐり王宮へ向かう。王宮には直接転移できないように結界が張られているため仕方がないそうだ。門の横にアレックス様の愛馬のジョナサンがつながれていた。学園に来るときも転移してきたそうだ。
「馬には乗れるかい?」
「いえ、初めてです」
「そうか、ではゆっくり走らせよう。私にしっかりつかまって」
そう言うと私を横向きに乗せ、背中から腕を回し支えてくれた。私はしっかりとアレックス様の胴へ手をまわした。がっしりと鍛えられた体にドキリと胸が高鳴った。スラリとして見えるのに……
「陛下に謁見したい。至急取り次いでくれ」
陛下が執務している部屋がある建物につくと、従僕に伝言を頼んだ。しばらく待っていると、謁見の許可が下り、執務室へと案内された。
「至急とは、よほどのことかな?フィーネ嬢と青い鳥まで同行とは」
「はい、火急のため申し訳ございません。お人払いをお願いいたします」
「なるほど、深刻そうだな。わかった、宰相以外はさがれ」
今の宰相様は、前宰相様の長女のお婿さんだそうだ。娘しかいなかった前宰相様に、学生の時に優秀だったのを見込まれて長女の伴侶に選ばれて後を継いだ、現ベイリー侯爵家当主ローガン・ベイリー様、元は伯爵家の次男だったのだから、当時は社交界でもかなり噂になったそうだ。(情報部モリス先輩談)
「宰相はいてもいいのだろう?」
「はい、いていただいた方がいいでしょう。では、念のため防音をさせていただきます」
「では、聞こうか」
「報告いたします。ルイス辺境伯領にある聖女の森の封印が害され、魔物が多数発生しているようです。5年前から異変があり、そのことを現ルイス辺境伯から報告された事実はございませんでした。このことから、原因はルイス辺境伯が関わっていると推測いたします。急ぎ調査隊を派遣したいのですが、よろしいでしょうか」
「今さらっと怖いことを言わなかったか?それが事実なら、1000年前のような災害級、いや人類存続の危機ではないか。それに5年前に亡くなったルイス辺境伯は父上が最も信頼していた側近の内の一人だ。彼の人柄は私も覚えているが、王家に仇なす者には見えなかった。わかった、派遣せよ。ただし影を使え」