第73話 占いが本当なら
「では、もう一度手を水に入れてもらっていいですか」
「はい、よろしくお願いします」
「では、魔物に関することを占います」
キャンベル先輩が目を瞑って呪文を唱えると、水がキラキラと輝きだした。
「森が見えます。かなり遠いです。石、石碑でしょうか……その石碑に何か刺さっているようです。これが原因です、近い未来、この原因が聖女の清浄を穢すでしょう」
「どうすればいいですか?」
「聖女自ら清浄の魔法をかけなければ、元には戻らない、魔物が増え、街や村が襲われます……」
「でも、私は聖女と言っても初代聖女様のように力が強いわけではないです。出来る自信がないです」
「青い鳥が力を貸すでしょう。出来るかどうかは、わかりません……」
水の光が消え、キャンベル先輩がふーっと息を吐いた。
「これ以上はわからないわ。この占いが本当なら、学生の範疇を越えますわ。フィーネ様の婚約者は魔法騎士団長でしたわね。すぐに相談してください」
『サキの清浄の魔法が穢されたんか……そんなあほなこと誰がすんねん』
「チルチル、もし本当なら力を貸して欲しいの。あの光景が本当になったら、みんな殺されてしまう」
『異世界から来たサキでギリギリやったんやで。フィーネが出来るんかわからん』
「それでもやらないと……夢でずっと見ていたの、何もできない、それが苦しかったの。私が出来なかったら夢が現実になる、それだけは嫌なの」
『しゃーないな。全力で頑張ったる』
「ありがとう、チルチル。すぐにアレックス様に相談するわ。今本当に魔物が増えているのか、それも知りたい」
「それなら、チャーリーに相談してみたらいいわ」
リリーの声がして振り向けば、そこに申し訳なさそうにリリーが立っていた。
「遅かったから覗いたら、話が聞こえてしまったの、ごめんなさい、覗いた時点で防音魔法が無効になったみたい」
「ううん、大丈夫よ。それで、チャーリーに相談?」
「彼は通信魔法が得意でしょ。いろいろな場所に仲間がいて、情報交換しているみたいなの。私には興味ないことだから気にしてなかったけど、その情報網があれば遠くの情報も聞けると思うのよ」
「そうか、なるほどね。じゃあチャーリーに相談してみるよ。今日は帰ったのかな?」
「いいえ、今日は騎士部に参加してから、情報部に顔を出すって言っていたから、この別館にいると思うの」
騎士部とは騎士を目指す人が体を鍛える目的で入る部活だ。情報部は何をしているか知らなかった。
「そう、同じ館なら今から行ってみようかな。情報部がよくわからないけど……」
「そうね、行ってみましょうか。ちょっと変わった人たちの集まりよ」
リリー曰く、個人情報ギリギリの情報を集めるのが趣味だったり、国の情報を趣味で集めたり、気象情報、街の流行り、とにかく何でも情報を集めたがる人たちが部活と言って個人で活動しているそうだ。その際に風魔法の通信魔法を使うことが多く、部員も風魔法が得意なものが多いらしい。
リリーと二人で情報部と書いてある扉の前に立った。
「ここよ、情報部。失礼します。チャーリーはいますか?」
ドアを開けて中に入ると、部屋の隅にある机の上は書類が積み上がり崩れそうになっており、中央にあるテーブルの上も物が溢れて雑然とした部屋だった。そして部屋の中にいる男性5人がこちらを見ていた。
「あ、あの、すみません……」