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第68話 聖女だとバレました

 リリーとクラスメートたちに合流して、今日の感想などを話していると、会場前方から悲鳴が上がった。悲鳴が上がった方を見ると、人だかりの向こうに白いドレスを着た女性が蹲っていた。側にはウィリアム殿下もいるようだ。私は慌ててそちらへ向かって行った。リリーが驚きながらもついて来てくれる。

「フィーネ、どうしたの?」

「血が見えたの……怪我しているなら助けないと……」

 現場から近かったので、すぐに状況が分かった。どうやら先ほどウィリアム殿下と一緒に踊っていたブレス侯爵家のミネルバ様が蹲って、胸のあたりから血を流していた。豪華な白いドレスが血で赤く染まっていた。リリーが隣で立ちすくんだ。私はそのままミネルバ様の方へ進んだ。

「大丈夫ですか?」

「フィーネ嬢……」

 ウィリアム殿下がこちらに気づいた。

「あの、私、癒していいですか?このままだと……」

「すまない、頼んでいいか」

「はい」

 私はミネルバ様の方へ近づき癒しの魔法を使った。ミネルバ様は痛そうにしていたが、傷自体は浅そうだった。これならすぐに治せそうだ。ドレスも浄化魔法で綺麗にできるだろう。ドレスに空いてしまった穴だけはどうしようもないが、血だらけよりはマシだろう。

「……あなた、余計なことしないでよ!!」

 傷を癒し、ドレスを浄化魔法で綺麗にした途端、ミネルバ様がドンと私を突き飛ばした。しゃがんで癒やしていたため、私はバランスを崩してその場に倒れ込んだ。

「フィーネ!!大丈夫か」

 アレックス様が私のところへ駆け寄って助け起こしてくれた。どうやら騒ぎを聞きつけてこちらへ来たようだ。

「ミネルバ嬢、私の婚約者はあなたを治療したのです。感謝されることはあっても、このような仕打ちを受けるなど……一体何が起こったのですか、ウィリアム殿下」

「それは、ここでは言えない。後程報告させてもらう。それより、この場を収める方が……」

 そこでようやく、私は自分が注目されていることに気がついた。

「聖女ではないのか?」

 どこからかそのような言葉が聞こえた。そう、今更だが拙いことをしたのだと気づいた……衆人環視の中、堂々と聖女の癒しの光を見られてしまった。光魔法だと言い切ったとしても、この人数だ、光魔法を使える人もいるのかもしれない、そんな中光魔法では不可能なほど驚異的なスピードで傷を癒してしまった……完全にやらかしてしまったのだ。

「アレックス様、あの、ごめんなさい」

「いい、大丈夫だフィーネ。君のしたことは正しい……」

「でも……」

「兎に角この場を離れよう。ウィリアム殿下、後程事情を聞きに伺います。この場は副団長のマックスが対応させていただきます。それと、フィーネの魔法は光魔法です。それで押し通すよう、くれぐれもお願いいたします」

 マックス様はいきなり振られて驚いていたが、てきぱきとその場を仕切りだした。リリーが心配そうにこちらを見ていたので、安心させるように微笑んでから、アレックス様と二人で馬車が止まっているところまで来た。

「ごめんなさい。怪我を癒すことしか考えてなくて、もっと違う方法があったかもしれないのに……」

「大丈夫だ、君は正しいことをした。後は任せて先に馬車で帰っておいて。片づけてから行くからね」


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