表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/213

第64話 舞踏会当日です

「お待たせいたしました、アレックス様」

 私はアレックス様に向かって淑女の礼をした。真っ白いドレスがふわりと広がりキラキラと輝いている。

「……フィーネ、綺麗だ。まるで妖精姫のようだよ」

 アレックス様は満足そうに微笑んで私の手を取ると、手の甲にキスを落とした。

「アレックス様もとても素敵です」

 魔法騎士団の騎士服姿だが、礼服用のそれはいつもより装飾品が多い。肩から短めの赤いマントを羽織っており、長身のアレックス様をより惹きたてている。さすが美貌の貴公子だ。

 家族に見送られながら、エスコートされて公爵家の馬車に乗った。今夜、王宮の舞踏会でデビュタントするのだ。成人して初めての舞踏会は、年に2回催され、15歳になった貴族はどちらかの会に参加するようだ。リリーもチャーリーも今回の舞踏会に参加すると言っていたので、会場で会う約束をしている。

「今回の会は、ウィリアム殿下のデビュタントでもあるから、規模が大きいし参加する貴族も多い。会場で逸れないように気をつけて。ずっと側についていてあげたいのだが、そうもいかないかもしれない」

 心配するアレックス様は、恋人というより保護者に近い。小さい頃から知っているからか、こういう時はどうしても子供扱いだ。

「はい、大丈夫です。学園の友達も沢山来ています。チルチルも髪飾りですが、一緒にいてくれますし、なんとかなります」

 ふう、とため息をついた。

「疲れている?」

「あの、少しだけ。朝から準備をして、初めてのことが多くて戸惑いました。公爵家からメイドさんを派遣していただき、助かりました。母と私だけでは、とてもこのドレスを着ることが出来なかったと思います」

 ドレスは公爵夫人マリアンナ様の見立てだ。母も一緒になってデザインから仕立てた特注品で、これだけでいくらするのか考えるだけで袖を通すのに緊張した。

 デビュタントは白を基調にするそうで、このドレスは白一色だ。ふんわりしたプリンセスラインに、裾の方に金の刺繍で薔薇の模様が散りばめられている。薔薇はアルダール公爵家の家紋にも入っていて、公爵家の象徴だ。胸元には真珠が縫い込まれているし、ネックレスとイヤリングはアレックス様から送られたものだ。今日一日のためにこれだけの品を用意する、庶民の感覚では信じられない事だった。


 アレックス様にエスコートされ、舞踏会が催されている大広間に入った。天井からは大きなシャンデリアがいくつもかかり、煌々と会場を照らしている。

 私たちの存在に気づいた貴族がコソコソと囁き合い、令嬢たちはアレックス様を見て頬を染める。婚約式以来、公の場に私が姿を現すのは初めてだ。値踏みされるような視線に、竦みそうになった。

「大丈夫だよ、笑って。私の婚約者は愛する君だけだ」

 極上の微笑みで、耳元で囁かれた。側で見ていた令嬢が、アレックス様の笑顔に真っ赤になって向こうへ行ってしまった。はい、気持ちはわかります。間近で見た私は心臓が爆発しそうです……

「はい、アレックス様がいてくれて心強いです」

「……そうか、では先に陛下の元へ行こう。デビュタントする者は最初に陛下にご挨拶をする。それさえ終われば、後は気楽に楽しめばいいからね」

「陛下……セイ様の息子さんですよね」

「そうだよ。父の兄で、私の叔父にあたる。優しくて素晴らしい方だよ」

「はい、頑張ってご挨拶しますね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ