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第61話 第三王子に目をつけられたようです

 朝、いつものように登校して教室へ向かっていると、どこからか殺気ではない視線を感じた。チルチルが頭に乗っているのでそういう視線は割と多く、気にせずにいたが、どうもその視線は頭ではなく私に向いているようだった。

 視線を感じた方向をそっと見ると、そこにはウィリアム殿下が立っていた。昨日のことで何か気になることがあったのかもしれない。王族に関わるのは避けたかったので、気づかないフリをして通り過ぎた。


 授業が終わり、私はリリーと別れて図書室へ来ていた。明日授業で使う資料を借りるためだ。明日は初の属性別授業があり、私は光魔法をとっていた。本当は私が使うのは精霊魔法で、光魔法とは違うのだが学園では光魔法で登録しているため、明日の授業までに光魔法と精霊魔法の違いを確認しておきたかったのだ。

 図書室の奥にある属性別魔法の参考書が並んでいる本棚に近づき、上の段にある光魔法について書かれた本を物色していると、背後に人の気配がした。

「何を探しているんだ?お前は小さいから上の段は取れないだろう?」

 突然声をかけられて振り返ると、そこにはウィリアム殿下が立っていた。

「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。風魔法で取ることが出来ますから」

 小さいと言われて少しムッとしてしまったが、一応笑顔で答えられたと思う。

「そうか。聞きたいことがあって、わざわざ来てやった。お前がアレックス兄様の婚約者のフィーネ嬢だというのは本当か?」

「……そうですが、なにか?」

「いや、事実なのだな。あの素晴らしいアレックス兄様の婚約者が、こんな不細工な鳥を頭に乗せた貧相な女だとは……それも最近まで平民だったと聞いたが、それは本当か?」

 なんだろう、チルチルでなくても飛び蹴りをしたくなるこの発言は……チルチルも頭の上で怒っているのがわかっているが、今は我慢して欲しい。

「はい、確かに私は平民として育ちました。最近母の弟であるスミス子爵の養子になりました。母は元々子爵令嬢でしたが、今は平民として暮らしております。それがなにか問題でしょうか?」

「いや、別に。お前、いやフィーネ嬢はアレックス兄様のことをどう思っているんだ?」

「……それを今、殿下にお伝えする必要がありますか?」

 不敬だろうか?少しそう思ったが、何故か答えたくなかった。きっとアレックス様の若い頃に似たウィリアム殿下に、不躾な態度をとられて傷ついていたのかもしれない。お前は相応しくないと言われた気がした。いつも陰口では聞いていたが、面と向かって言われたのは初めてだった。ショックを受けたのか、目頭が熱くなってきた……こんな人の前で泣きたくないのに……

「ウィリアム殿下、私の可愛い婚約者を貶めるのなら、今後あなたのことは敵とみなしますが?」

 アレックス様の声が聞こえたと思った瞬間、私は優しくアレックス様に抱きしめられた。

「アレックス様、どうしてここに??」

「君の後姿が見えたから追ってきたんだけど、まさかウィリアム殿下にお会いするとは思っていませんでした。王族とは思えない発言、いつまでお子様でいらっしゃるのですか?」

 アレックス様は微笑んでそう言ったが、目は笑っていないし、周りの空気は凍えるほど冷たくなってきた。ここは図書室だ、本が傷んでしまう。

「アレックス様、冷気で本が傷んでしまいます。押さえてください」

 アレックス様はにっこりと微笑んで、私の頬を撫でた。冷気もおさまったようだ。

「フィーネは本にまで気を配るなんて、本当に優しくて偉いね。さすが私の婚約者だよ」


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