表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/213

第60話 使い魔です

 チルチルは私の頭からチョンと肩に飛び乗った。

『はぁ?誰が不細工なヒヨコや、可愛い可愛い小鳥さんやないかい!』

「ヒヨコが……喋った、だと?」

「あーっ違います!この子は使い魔で、インコの仲間なので真似して喋るのが得意なんです!!」

 私は今にも反論しそうなチルチルの嘴をおさえて、小声で囁いた。

「チルチル、お願い。喋っては駄目、帰りに屋台で何でも買ってあげるから、今は私に合わせて」

「真似、今のが?」

「はいそうです。チルチル、可愛い」

 私がそう言うと、チルチルも同じように繰り返した。

『チルチル、かわいい』

『チルチル、てんさい、チルチル、さいこう』

「……続けて言っているが?」

「それは、前に……教えたもので、いくつか言葉も覚えています!」

「そうか、芸達者なヒヨコだな」

 そう言って、ウィリアム殿下は去って行った。その背中が見えなくなると、わなわなと震えるチルチルが大声で叫んだ。

『誰がヒヨコじゃボケ~!!今度言うたら飛び蹴りしたる~!!』

 口の悪い鳥である。私は約束通り帰宅途中に屋台へ寄って、チルチルの好きなものを買うことにした。屋台の食べ物の中には、聖女サキ様が考案した食べ物がいくつかあるそうだ。

異世界から来たサキ様が食べたかったものを再現したらしい。チーズが中に入ったまる焼き、野菜と肉を卵と粉で混ぜて焼いた粉焼き、そしてクレープだ。

 まる焼きは、タコという生物を入れるそうだが、この世界にタコという生物が見つからず、代用でチーズを入れて丸い形に焼いたものだ。こちらに来た聖女サキ様は、最後まで元の世界へ帰りたいと思っていたそうだ。残念ながら1000年前に聖女サキ様が書いた日記は、異世界の言葉で書かれており読むことが出来なかった。200年前に書かれたサーラ様の日記は愚痴ばっかりだったし……私がそう言うと

『ああ、あの聖女、一回会ったで。寝ぼけて偶然宝石にキスしたんや。そん時、元婚約者を呪いたいとか、禿げさせる方法を教えろとか、物騒な事ばっかり言いよったから、そっこー宝石に戻ったったわ。後はずっと無視や』

「ああ……なるほど、ミラ様の言っていた200年前に精霊が現れたというのはそれね。私は日記で読んだよ、元婚約者に禿げろって書いてあった」

『そや、そんな鳥の羽むしるような行為、怖すぎてさぶイボ出たわ』

「さぶイボ?」

『ああ、鳥肌のことや。さぶいと出るやんブツブツのイボみたいなやつ。鳥が鳥肌って変やろ、だからサキの言い方でゆうてんねん』

「なるほど、深いような深くないような?」

『そこは別にボケてへんで』


 チルチルは屋台の前で悩んだ末に、クレープを買うことに決めたようだ。

『早よ帰ろ。ここじゃ食べられへんわ』

 急いで帰宅すると、庭のベンチの前でチルチルはポンッと大きくなった。いつ見ても大きくなると綺麗な鳥だ。小さくなると、何故かヒヨコのような丸いフォルムになってしまうが……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ