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第56話 大きくなれるんですね

「こっそり言わなくてもいいぞ。元々ママと暮らしていたからね。初めは王宮の習慣に馴染めなくてね。息抜きが必要だったんだ。そんな時に父上がこっそり街に連れ出してくれたんだ。屋台で買い食いもしたな。徐々に慣れていったけど、たまに街に行くと気が楽になるんだ。婚約者だったマリアンナともお忍びで出かけていたし、今もたまにするんだよ」

「そうだったのね、セイありがとう。アーサーがいい子で育ったのはあなたのお陰ね」

 照れくさそうに微笑むセイ様を見て、はっと気がついた。ミラ様、セイ様の子供がアルダール公爵様……25歳くらいにしか見えない二人の子が、どう考えても不思議な光景だ。

『あ、よく見るとセイもレンブランに似てるやないか。なんでや?』

「セイはアレックスのお爺様だからよ。レンブランは初代の王よね。そんなに似ているの?」

 ミラ様がチルチルの疑問に答えた。

『お爺様??なんやようわからんな。レンブランは金髪碧眼やったから、アレックスの方がよう似てるな』

「レンブラン様もカッコよかったのね。王宮の奥にある肖像画は、劣化が激しくて分からなかったわ」

「ママは王宮の奥に入ったことがあるのか」

「ええ、セイに会うのに王宮の奥の方がかえって人に会わなかったのよ。本当にあの時はコソコソ会っていて、性に合わなかったのよ。愛人なんてするもんじゃないわよ」

「ごめんよ。私のせいで……」

 シュンと肩を落として反省するセイ様……80歳には見えない……可愛い……

「フィーネ、お爺様を見過ぎだよ。やっぱりお爺様みたいなのが好みなのかい?」

 私は慌てて首を振った。このままでは氷の魔法騎士、美貌の貴公子と呼ばれているアレックス様が、お爺様を真似て可愛くなり、さらにモテてしまうかもしれない……そんな未来は望んでいない。

「今のままのアレックス様がいいです」

「そうか、フィーネがそう言うならいいが」

『あーはいはい、イチャこらせんと早よ食べようや』

 チルチルはそう言ってテーブルの方へ飛んで行った。皆はそんなチルチルを見て疑問に思ったのか、じっとチルチルを見ていた。チルチルは私の手の平に余裕で収まるサイズだった。嘴は私の小指の爪ぐらいの大きさだ。テーブルの上に乗っている食べ物はチルチルには大きすぎる気がするのだ。

『なんや?なんで見てくるねん』

「えっと、チルチルは何が食べたいの?」

 とりあえず食べたがったものを刻めばいいかと思い、そう聞いた。

『そやな、この大きめの肉を一口でがぶっと食べたいんや』

 チルチルはキラキラした目で、テーブルに乗っている骨付き肉を羽で指した。

「は?一口で??無理だろう」

 アレックス様が思わず言った。皆も口にはしなかったが同意見だと思う。

『無理ちゃうわ。わいは大きくなれるねんで』

 チルチルは、食堂の広い床に降り立つと、ポンッと音を立てて変身した。そこに立っているのは小型のドラゴンぐらいの大きさの青い綺麗な鳥だった。大人一人なら乗れそうな大きさだ。

『ほな、いただきますぅ』

 そう言って、大きな骨付き肉を本当に一口で食べてしまった。続けざまにフルーツも頬張り、あっという間に食べ終わった。そしてまたポンッと小さくなって私の頭の上に乗ったのだ。

『ごちそうさん』


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