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第53話 アレックスは嫉妬する

 フィーネは真っ赤な顔で言い訳をした。ファーストキスと聞いて俺も大人気ない態度をとってしまった。まだ幼さが残るフィーネに、自分はまだ関係を進めずにいる。好きだと伝えたが、どこまで俺の気持ちが伝わっているか分からず、正直距離をはかりかねていた。

「そうか、それはキスじゃないと思うから、大丈夫だ」

 自分に言い聞かせるように、そんな事を言った。それにしてもこのヒヨコ、いや青い鳥らしいものは何なんだ?乙女の涙は宝石のはずだが、これがその宝石なのか?

『なんや?気になるんやったら特別に何でも答えたるで』

 太々しい態度も気にいらない。精霊だと言っていたが、初代聖女を助けたのが、まさかこのヒヨコなのか??

『今、何か貶された気ぃするわ。一回飛び蹴りしてええか?』

「あ、チルチル、駄目!アレックス様、あの今夜来るって言っていましたよね」

「あ、ああ、少し早く着いてしまったんだ。マルク殿はまだ帰宅してなかったから、先にフィーネに会いに来た。最近顔色が悪いことがあって気になっていたから」

 学園でフィーネに今夜行くと伝言したのに、気を使ったマックスが、今日の業務の代行を申し出てくれたため思いのほか早く到着してしまった。先にフィーネに会おうと部屋の前に来ると、部屋の中から話し声がして慌てて扉を叩いたのだ。まさか鳥と喋っているとは思ってもいなかった。


「気づいていたんですか?少し寝不足気味で、そんなに顔色悪かったですか……」

 自分の顔を両手で押さえて、恥ずかしそうに俯く姿も可愛い。

「いや、私がフィーネをよく見ていたから気づいただけだと思う」

「よく見て……はい、ありがとうございます」

 フィーネが頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。この反応は、少しは関係を進めても……?そう思ってフィーネに手を伸ばそうとすると、目の前で青い物体が動いた。

『おぇ~砂糖より甘々やで。わいの前でなにイチャイチャしてんねん』

 フィーネはハッとしたように、俺から距離をとった。俺は思わずフィーネの頭に乗っている青い鳥を睨んだ。何、邪魔しているんだ。声に出さずに鳥に向かってそう言うと、鳥は意地の悪そうな目で俺を見た。こいつわざといいタイミングで声をかけたのか?なんて性格の悪い鳥なんだ!

「フィーネ、その鳥はずっとフィーネといるのか?」

「あ、はい。チルチルは乙女の涙なので、魂を補うために一緒にいてくれるんです」

 嬉しそうにそう言われると、離れて欲しいとは言えなかった。実際離れるとフィーネが困ることになる……と、いうことは、一生こいつに邪魔をされて、俺はフィーネに何も出来ないのではないか??

「……そうか、よかったな」

 内心こんな鳥いなくなればいいのに、と思いながらそう言った。

『なんや残念そうな顔してへんか?』

 鳥はジト目でこっちを見ながらそう言うと、フィーネの肩にとまって彼女の頬にスリスリと頭をこすりつけた。フィーネはくすぐったいのか、クスクスと笑い声をあげている。胸がムカムカする。今すぐ消し炭にしたい気分だ。まさか俺はこんな鳥にまで嫉妬しているのか??

 自分の狭量さに愕然としていると、フィーネが心配そうにこちらを見上げてきた。上目遣いでこちらを見てくるなんて、反則だろう。初心な少年のようにドキドキと高鳴る胸を必死に落ち着けた。

 兎に角、この鳥が離れても問題ない方法を早急に考えないと、フィーネと今後何も進展することなく結婚し、ずっとこの鳥に監視されながら結婚生活を送ることになる……そんなの有り得ないだろ……


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