第51話 ミラ様の計略
「あはは、そうね。ビックリさせてごめんなさい。1000年前から精霊は現れてないって言ったけど、実は200年前に一度現れたと文献にあったのよ。ほんの一瞬で、その時の聖女の夢じゃないかって言われているんだけど。もしも事実で、精霊が何かの拍子に宝石から出てどこかに行ってしまったら、フィーネは死んじゃうわけでしょ?だから一応検証して、そこで精霊が現れたら、より確実な方法でフィーネと一緒にいてもらう方法を行使しようと思っていたのよ。でも事前に説明すると、精霊に悟られそうだったからね。勝手に契約魔法を使ってごめんなさい」
少しばつが悪そうに、ミラ様が謝った。セイ様は計画を知らなかったようで、隣でぽかんとしていた。
「あ、いえ、私のために危険なことをしてもらって、こちらこそすみません。気遣ってくれてありがとうございます」
チルチルは力のある精霊なのだ。あの時もしチルチルが怒っていたら、ミラ様は無事でなかった可能性だってあったはずだ。旅立つ前に私の命を心配して行動してくれたのだろう。
「あはは、そんな感謝しないで。検証したかったのは事実なのよ。怖いもの見たさ……なんてね」
セイ様がミラ様をぎゅっと抱きしめた。
「私を置いて行かないで。今度からはちゃんと説明して。何かが君に起こって死ぬときは一緒がいい」
ミラ様は嬉しそうに微笑んだ。
「はいはい、ごめんね。次からはちゃんと言うわ。よろしくね相棒さん」
セイ様は嬉しそうにミラ様の頬にキスをした。何度もするので見ているのが恥ずかしくなって、私は自分の部屋へ避難してきた。お互いが好きで信頼を寄せる関係、私はアレックス様をそんなふうに見て、そして見てもらえるか自信がなかった。はぁーとため息とつくと、頭の上でごそごそとチルチルが動いた。
『なんや、ため息なんてついて、幸せが逃げていくで』
「あ、チルチル、さま」
『チルチルでええで。ずっと一緒なんや、敬語なしで気楽にしてや』
「うん、ありがとう。ごめんね、無理やり側にいてもらうことになって……」
『ええよ、長くても100年くらいやろ。全然平気や、まかしとき』
チルチルは、羽をフリフリしながらそう言った。
「あの、今後の為にも気になったことを聞いていいかな?」
『ええで、なんや?』
「その、チルチルの言葉、ちょっと変わってない、聞いたことがない言葉が多くて」
『ああ、これは異世界から来た聖女サキがこんな言葉やってん。ずっと一緒におったら話し方がうつってもうて、直らんねん。いや~1000年たっても直らんって、おもろいな~、って、なんでやねん』
「……」
『あかん、引かんといて~まあ、そのうちこの言葉も慣れるって。ちなみにチルチルって名前もサキがつけたんやで。異世界で青い鳥ってゆうたらチルチルやって、ようわからん事ゆうてたわ』
「そうなんだ、サキ様と仲が良かったんだね。どんな方だったの?」
『めちゃめちゃ元気な子やったで。いきなり異世界から来て魔物と戦わされて、それでも愚痴を言わん、頑張り屋さんやった。でも、最後まで二ホンに帰りたいってゆうてたわ……帰れんかったけどな』
「そうなんだ……」
『でも、勇者レンブランと想いを通わせて、幸せそうやったで。子孫が今の王族やろ?』
「そっか、想いを通わせる……どんな感じなのかな、まだわからないや」
『なんや、恋の悩みかいな、青春やな』