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第44話 西の魔女の公開処刑

 青く雲一つない空に、国民の罵声が飛ぶ。処刑台を設けた広場には、見物に来た人で溢れかえっている。

「予想以上に人が多いんですね……人が火炙りで殺されるのに……」

「そうだね。罪人の処刑は一種の娯楽のようなものだ。さすがに子供は見学を禁止されているが、女性も多いだろう?」

「はい、正直私は浮いてしまうと思っていましたが、こんなに女性がいたら目立ちませんね……」

 隣でアルダール公爵様が苦笑した。今日は西の魔女ミラーリアが処刑される日だ。大丈夫だと聞いてはいたが、心配になって見に来てしまった。アレックス様は魔法騎士団長として処刑場に立っているので、保護者代わりにアルダール公爵様が付き添ってくれているのだ。


 ちょうど1週間前に、前国王陛下アレクセイが長く患っていた心臓の病で崩御したと発表された。遺体を安置した聖堂には、死を悼む国民が連日押し寄せた。3日後、盛大に葬儀が執り行われ、王族が眠る墓地に埋葬が行われた。

 その様子を遠目に、ミラ様と私の横で複雑な心境で眺める男性がいた。そう、本物の前陛下アレクセイ、改めセイ様だ。なぜ今こうしているかといえば、これはミラーリア様、改めミラ様がたてた計画だからだ。

 あの後ミラーリア様が作り出したアレクセイ様の遺体(土人形)を寝台に寝かせると、医師を呼ぶようにミラーリア様が言った。慌ててやって来た医師にミラーリア様が暗示をかけた。そして驚くみんなにこう言った。

「だって、さすがに土人形を診察したら、いろいろバレちゃうわよね?」

 暗示により、心臓発作の末亡くなった、と無事に診断され、3日間の安置も終え、葬儀をして今に至った。その間、アレックス様の知り合いの冒険家ミラ様とセイ様は私の家に寝泊まりし、すっかり私の家族とも打ち解けた。ちょくちょくアルダール公爵様が訪問していたが、それすら気にしない家族で本当に助かった。

 

 そして、異例の速さで裁判が行われ、捕まっていた西の魔女が公開処刑される日がやって来たのだ。火炙りになるのは土人形ではなく本人だ。不安そうに見守るアルダール公爵様の隣で、青い顔で落ち着かないセイ様もいる。計画としてはこうだ。初めは本人が火炙りになり、炎に包まれ見えない隙をつき、土人形とすり替わる。簡単そうに言っていたが、これを見物客を含め、衆人環視のなかでやるのは大変なことだと思う。

 ラッパの音が響き渡り壇上に現国王陛下であるマルク-ル様が現れた。人々の歓声に応えながら、どこか緊張した面持ちである。勿論計画を知る一人である。この事実を知っているのは陛下を含め、あの場にいた者だけだ。王太子のオリバー様を初めとする3兄弟にも知らされていない。

 あの後、訃報を聞き駆けつけた陛下に、アルダール公爵様が事情を説明し協力を求めた。自分の母親がしたことを知ったマルク-ル陛下は暫く茫然としていたが、若返った父親を見て嘆息すると、協力することに同意した。

「あの当時の母が追い詰められていると、薄々気づきながら、執務が忙しいと言い訳をして向き合おうとしなかった、後悔しています。アレックスと年の近かった王太子のオリバーと次男ベンジャミンは魔力が低かったから、きっと母は自分の孫を守りたかったのでしょう。それほどにアレックスは素晴らしい逸材だ……すまない、あの時幼かった君を責めてしまったな。フィオリーナを何故守れなかったと……きっと私も君をうらやましく思っていたのだろう。今は頼りにしているよ、魔法騎士団長」

「はい、期待に応えられるよう精進いたします」

 アレックス様は、陛下に向かって敬礼をした。

 

 壇上の横に処刑台があり、奥から西の魔女ミラーリアが現れた。髪色と瞳は魔法で一時的に前の色に戻している。堂々と騎士に連れられて死刑台の前まで歩き、処刑台に縛られた。そして……


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