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第40話 アレクセイの後悔②

 子供を産んで、育てて欲しいとミラーリアに頼んで、今度こそ彼女の手を離した。それからは、今までの最低だった自分の行いを反省して、生まれる子供とイザベラを大切にしようと心掛けたつもりだった。

 だが、どこから調べたのか、姿を消したミラーリアが妊娠していること、私が宝石を渡したことがばれてしまった。そして、何者かに宝物殿が一部破壊された。納められた宝物に被害は無かったが、王都である噂が流れた。王太子の愛人の魔術師が、嫉妬の末に宝物殿を破壊、国宝の宝石数点を盗んで姿を消したというものだった。

 愕然とした、証拠はないがきっとイザベラの仕組んだことだと思った。そこでまたイザベラから心が離れた。生まれる子のために自ら身を引いたミラーリアをどこまで追い詰めるのか、どうして私を責めないのか……その時にちゃんと話し合いをすればよかったのだ。でも、私は早々に諦めてしまった。

 二人目のキャサリンが生まれてからは、義務だと思っていた夜の訪問もやめた。今思えば、イザベラの心はすでに壊れていたのだ。プライドの高い彼女は、私に本音を言えなかった。何度もミラーリアに嫌がらせをしていたが、それでも笑っている彼女にも、その彼女を愛している私にも、心の内は見せなかった。いや、私があえてイザベラの弱さを見ていなかった。

 ある日、イザベラが私によく似た男の子を抱いて現れた。私はすぐにその子がミラーリアと私の子だと分かった。私が彼女に渡した宝石数点を渡され、彼女は事故で崖から転落して亡くなったと説明された。信頼のおける宰相と騎士団長もそうだと証言した。あまりの衝撃に茫然としたが、幼い息子が母親を失ったのだと、すぐに家族の一員に迎え入れた。イザベラも快く賛成してくれた。多少の違和感はあったが、その当時は彼女を失ったと信じて、自分の心を保つことに必死だったため気に留めなかった。

 イザベラもアーサーに優しく接していたし、自分の子供と同じように育ててくれていた。ある日些細なことでイザベラと口論となった。夜になって子供部屋を覗くと、スヤスヤ寝ているアーサーの首を絞めようとするイザベラを発見した。なんとなく嫌な予感がしていた。イザベラと口論になった翌日に、アーサーの体に痣が出来ていることがあったのだ。本人は寝ていて気付いていないようで、初めは寝相が悪いのかと思っていた。

 アーサーはイザベラを慕っていたし、二度としないと約束したので不問にした。そして口論することがないように心がけた。平穏な生活が続いた。アーサーが成人すると、すぐに婚約者を探し、公爵にして王宮から出した。いつイザベラがアーサーに手を出すかと、ずっと警戒していた。アーサーは無事結婚して温かな家庭と二人の子を持った。本当に嬉しかった。ミラーリアも天の国で安心していると思った。

 王女キャサリンもスコット侯爵へ降嫁し子供二人に恵まれ、王太子のマルク-ルも婚姻して跡継ぎ得て、立派に執務も公務も手伝ってくれている。絵にかいたような幸せな王族一家だと安心していた。気が緩んでいたのかもしれない。アレックスの魔力が高いと聞いた時に、無意識に言ってしまったのだ。

「アーサーの次男のアレックスは、魔法の才能があるらしい。きっとミラに似たのだろうな」

 言ってしまってから、しまったと思ったが、イザベラは特に気にする様子もなかった。だから、注意を怠ってしまった。

 それから10日後にアレックスとフィオリーナが何者かに襲われた。もしかしたら……と思ったが、イザベラはその日から寝込んでいた。可愛がっていた孫娘が殺されたのだ。心労からだと思っていた。

 事件が落ち着いてからアレックスから事情も聞いた。同じ年のフィオリーナとアレックスは性別こそ違うが双子の様に姿が似ていた。襲われた当日は、二人で服装を交換して両親を騙そうとしていたそうだ。軽いいたずらのつもりだったのだろう。まさか、その時に襲われるとは……そこである可能性に気がついた。もし、服装を交換していなければ、殺されたのはアレックスではなかったかと。それならば、犯人の心当たりがあった。

 しかし、それを問う前にイザベラは2階のバルコニーから飛び降りた。突発的な行動だと医師は言った。幸い命は助かったが、足に障害が残り、歩行が困難になった。その時初めて医師から、イザベラは長年精神を病んでいると告げられたのだ。私は責任を痛感し、王太子のマルク-ルに王位を譲りイザベラの介護をすることにした。


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