第31話 西の魔女
「それでは、皆さんそれぞれの属性魔法を的に向かって打ってください。十分気をつけて」
先生の指示で各自、的に向かって攻撃魔法を放つ。私の水魔法は真っ直ぐ飛んで的に当たった。
「上手です、フィーネ。私の火はそこまでまっすぐ飛びません」
リリーの火は、最初は真っ直ぐ飛ぶのに、途中で曲がってしまうようだ。それはそれで面白い魔法だと思う。
「水魔法は小さい頃から使っていたから、ある程度できるけど、風魔法は全くうまくいかないよ……」
発動までは出来たが、風を操る方法が全く分からない。
「風魔法はチャーリーに聞けばコツを教えてくれるわ」
「そうか、チャーリー得意だもんね」
少し離れたところにいたチャーリーに声をかけようとしたその時、隣で大きな風が巻き起こった。その場にいた生徒の制服が巻き上がるほどの暴風だ。先生が慌てて非難を呼び掛けた。
「あら、少し派手な登場になってしまったわ」
隣から聞いたことのある声がした。
「ミラーリア・ジョシュア先生……」
「あら、私の授業を受けていた子ね……そう、あなたが」
そう言って先生は私の腕を掴んだ。突然のことに驚きすぎて声も出なかった。掴まれた腕が痛い。
「ねえ、死んで欲しいんだけど、あなたにも加護があるのね……魔法は通じない……そう、面倒だけど直接的に殺さないとね」
そう言って、先生は私を押し倒すと首に手をかけた。
「……あ……」
何が起こったか把握する暇もなく、ギリギリと首を絞められる。周りの生徒や先生は、こちらに来ようとしているようだが、何か視えない壁に阻まれてこちらに来られないようだ。締め上げられて視界がぐらぐら揺れてきた。だめだ、このままでは……
「……あ、あ」
その時、先生の首から青い宝石のついたペンダントがこぼれ落ちた。丁度私の目の前にぶら下がっている。私はもがいてそのペンダントを引きちぎった。
突然ドンッと大きな振動がきた。前を見ると上に乗っていた先生が吹き飛んでいた。急に肺に入ってくる空気にむせていると、背中に大きな手が当てられた。
「大丈夫か、フィーネ。遅れてすまない」
「……アレ、ク、……ス、さ、ま……」
「ちょっとだけ、待っていて。すぐに終わらせるから」
そう言うと、ミラーリア・ジョシュア先生に向かって攻撃を仕掛ける。マックス様と先生は防護壁を展開しつつ、生徒を避難誘導しているようだ。
「フィーネ、大丈夫?歩けなさそうだから、チャーリーに運んでもらいましょう!!」
チャーリーが背中を向けたので、私はその背中につかまった。
「走るよ!揺れるから喋らないでくれ。リリーも急いで」
3人でマックス様がいる方へ走った。アレックス様は私たちの方へ魔法が来ないように、魔法で防護壁を作りながら戦っているようだ。早く非難して負担をなくさないと……
「フィーネちゃん、大丈夫かい?突然で驚いているよね。実は僕も驚いているんだ。展開が早すぎて混乱するよ」
そんなことを言いながらもマックス様は、生徒全体を覆うように完璧に防御している。さすが副団長だ。アレックス様はミラーリア・ジョシュア先生と一進一退の魔法攻撃を繰り返している。