第24話 西の魔女を探しましょう
サミエル大神官長様のお陰で、体調も少し回復した。アレックス様も今夜からは出来るだけ一緒にいてくれるようだ。久しぶりにアレックス様に包まれて、安心したのか悪夢もみなかった。
残念ながら起きた時には、アレックス様はすでに出勤した後だった。いつも先に起きて仕事に行ってしまうので、まだアレックス様の寝顔を見たことがない。きっと寝顔も綺麗なんだろうな……
「おはよう、フィーネ。今日は顔色もいいわ」
「うん、今日はぐっすり寝たから元気だよ」
「そう、良かったわ。アレックス様が今日、学園にも顔を出してくれるって言っていたわ」
「そうなんだ。じゃあ、学園でも会えるかもしれないね」
いつもより少し早く学園に登校した私は、学園内の薬草園に来ていた。西の魔女の情報は少ないので、手がかりの薬草という言葉を頼りにここに来てみたのだ。薬草園に来ると、私より先に来ている生徒がいた。タンポポ色のふわふわの髪に、翡翠色をした瞳の可愛い系の美少女だ。どうやら薬草に水をあげているようだ。
「あの、おはようございます」
じっと見ているのも変かと、とりあえず声をかけた。少女はチラリと私を見たが、そのまま水をあげ続けている。なんだろう、無視するの、人見知り?
「あの、私も手伝いましょうか?結構広いですし、一緒にやったほうが早いですよ」
また、少女はチラリとこちらを見た。聞こえてはいるようだ。でも反応がない……私は手の平に水魔法を発動した。そして出来るだけ大きな水の塊を作った。いつもはこれを弾けさせて水を撒くのだ。でも、先日風魔法の適性があると知った私は、さらにそこに風魔法を混ぜようと思ってしまった。まだ、魔法の授業でなにも習っていなかったので、独学だった。焦った顔の少女と目が合った瞬間、魔力が大きく膨らんだ。拙い、暴発するかも、そう思った時には体が後ろに押されていた。
「ばか、なにやってんだ!!」
視界にタンポポ色の髪が飛び込んできた。どうやら抱え込まれているようだ。先ほどまで立っていた場所は、暴発で大きく地面がえぐられていた。それにしても、この声……?
「え、男の子……?」
「いや、そこじゃない!危ないだろ!!お前、吹き飛びたいのか?」
「あ、ごめんなさい。…地面に穴が開いてしまったわ……」
「そうだな、俺が押さなかったら、お前に穴があくところだったんだぞ?わかっているのか?死ぬぞ」
「……助けてくれて、ありがとう?」
「そこは疑問形じゃないだろう。なんなんだよ、お前は」
「あ、お前ではなくてフィーネといいます。えっと、男の子??」
タンポポ色の髪をガシガシとかきむしりながら、翡翠色の目がこちらを睨んできた。それすら可愛い。
「疑問形にするな、どう見ても男だろ?」
「ごめんなさい、可愛い女の子にしか見えない……」
「はあ?俺は男だ。それもお前、そのバッチ1年だろ。俺は3年だ、年上だぞ」
「え?先輩。すみません、同い年だと思っていました。可愛、い、じゃなくて、はい、すみません」
「ところで、ここに何しに来たんだ。ここは薬草園だぞ?」
「ええ、と、薬草に興味があって、見学に?」
「だから、なんで疑問形なんだ?」
「そうですね、なぜでしょう?あ、でも聞きたいことがあって」