第23話 過保護に慣れていません
「フィーネ、リリアンナ嬢。二人でこんな所でどうしたんだ?」
振り返るとそこにアレックス様が立っていた。後ろに魔法騎士団の制服を着た騎士が3人いる。
「アレックス様……」
「フィーネ、顔色が真っ青だ。どうした?体調に問題が……」
「少し疲れが出ただけです。それより、どうしたんですか?」
「ああ、今日は魔法騎士団の講習の打ち合わせと、最近王都で起こっている……まだこれは言えないんだ。すまない。それよりフィーネ、君の体調の方が心配だ。今日はこのまま解散だから、家まで送っていくよ」
後ろにいた騎士たちが、びっくりしている。解散は今聞いたと顔に書いてある。お仕事を優先して欲しいと思ったが、今は立っているのがやっとの状態だったので、連れて帰ってくれるならお願いしたい状況ではあった。
「すまないが、ここで解散する。副団長のマックスにあとで報告に来るように伝えてくれ」
「はい、了解しました」
そのまま魔法騎士団の人たちは去っていった。
「ごめんなさい、本当にお仕事は大丈夫ですか?」
「ああ、問題ないよ。ここのところ休みなしで動いたんだ。今日くらい許してくれるさ。それよりフィーネ。こんなに体調が悪化するなんて、なにかあったのか?とりあえず家に帰ろう。いや、神殿か……リリアンナ嬢、急ぐのでここで失礼する」
「はい、フィーネをよろしくお願いいたします」
アレックス様が私を抱えて、転移魔法を使ったようだ。目を開けると神殿の中にいた。少し意識が無かったのか、目を覚ましたらベッドの上に寝かされていた。遠くでアレックス様とサミエル大神官長様が話す声が聞こえる。はっきり聞こえないが、体調が悪いことを懸念する内容だ。私はゆっくり身を起こした。
「フィーネ、大丈夫かい?」
アレックス様が急いでこちらに来てくれた。サミエル大神官長様もいるのだ、今なら言えるかも……
「あの、先ほど予言がありました」
「予言?」
「はい、学園のキャンベル先輩が突然予言をされました。このままだと16歳までに死んでしまうそうです」
「ああ、キャンベル伯爵家の占い姫か……彼女の予言は信頼できる」
サミエル大神官長様も彼女を知っているようだ。
「そんな、16歳とは早すぎる、いやこのままだと拙いことになるのはわかっていた……でもフィーネが」
アレックス様は現実を受け入れるのに、混乱している。
「西の魔女が学園の中にいるそうです。キャンベル先輩が占ってくれました。乙女の涙も近くにあると言っていました。女性で、薬草が視えたそうです」
「西の魔女が……あれほど探したのに、全く手掛かりがなかった……そうか、占いか、その考えは思いつかなかった……それで、他には?」
「それが、西の魔女のことはそれ以上視ることは難しいと……」
「そうか、妨害する魔法がかかっているのかもしれないな。そのキャンベル嬢は優秀な占い師なのだろう」
「そうですね、キャンベル伯爵家の占い姫と呼ばれる天才ですよ。トルカーナ魔法学園に入学してからは更に安定した占いが出来るようになったそうです。さらに突然予言をするそうで、その的中率は10割です」
サミエル大神官長様が、補足してくれる。どうやらすごい先輩だったようだ。あの時彼女に会えたのは、幸運だったようだ。
「10割、つまりこのままだとフィーネは16歳までに死ぬという事だな……乙女の涙を手に入れなくては……」