第22話 占ってもらいましょう
「あ、フィーネ・スミスです」
「もしかして、魔法騎士団の団長アレックス様の婚約者……そう、あなたが聖女なのね……」
「え、聖女???」
隣でリリーが驚いている。違う意味で私も驚いている。
「どうしてそのことを?」
「ああ、ごめんなさい!!あの氷の魔法騎士と言われるアレックス様の心を射止めた方が、どんな方か気になって占ってしまったの~勝手にごめんなさい!!」
氷の魔法騎士?そんな二つ名もあるんだ……なるほど、占いで聖女だと……かなり優秀な占い師なんだろう。この人なら手がかりが掴めるかもしれない。
「リリー、詳しいことは後で説明させて。キャンベル先輩、そのことは誰かに言いましたか?」
「そんな、さすがに誰にも言ってないわ」
「では、そのまま秘密にしてください。そして、死を回避する方法、占ってください」
「わかったわ。では、この噴水に両手を入れてじっとしていてね」
言われたとおりに、水の中に両手を入れた。ヒンヤリとした水が気持ちいい。キャンベル先輩も水の中に片手を入れた。聞き取れないが呪文を唱えているようだ。淡く噴水の水が輝きだした。
「……死を回避、乙女の涙、近くにある、西の魔女……学園内、女、薬草……」
噴水の水の光が消えた。キャンベル先輩が顔を上げて少し申し訳なさそうにした。
「ごめんなさい。占いが不鮮明だわ。いつもならもっと綺麗に映像が視えるのに、今視えたのは小さな青い宝石、乙女の涙と言われるものみたい。今はとても近くにあるようよ。西の魔女が関わっているのね。私の力では魔女の力に敵わないから、詳しくは占えないけど、西の魔女は学園に、女の人で薬草が視えた。これが限界よ」
「ありがとうございます。キャンベル先輩、少し希望が見えました」
乙女の涙が近くにある。それだけでも希望が持てた。行方不明よりずっとましだもの。
「そう、それなら良かったわ。他に何か視えたらまた教えるから、是非予言を打ち破ってね」
キャンベル先輩はそう言って去っていった。そうだ、打ち破らなければ16歳までに死んでしまう……とんでもない予言だわ。でも、知らないよりはいいような気がする。最近眩暈の頻度が多くなっていた。それは自覚していたけど、それがどういう意味かはあえて考えないようにしていた。命の期限を突き付けられたのだ。もう見ないフリは出来ない。
「驚かせてごめんなさい、リリー。説明がややこしいんだけど、聞いてくれる?」
リリーは無言で何度もうなずいていた。
リリーにはフィオリーナの魂が私の中にあること以外の事情を説明した。聖女だと最近気づいたが、王族と縁結びされそうで嫌だから隠すことにしたことや、最近体調がだんだん悪くなって、それを補うのに乙女の涙がいること。その宝石は西の魔女が持っていること、行方不明だと思っていたけど、先ほどキャンベル先輩が西の魔女が学園にいると言っていたので探したいと思っていることなどだ。
「そう、いろいろ大変だったのね。私も協力できることはするから、頑張って西の魔女を探しましょう」
「ありがとう。リリーがいてくれて心強いよ」
「事情は説明できないけど、チャーリーにも手伝ってもらいもしょう。人は多い方がいいと思うの」
「そうだね。手伝ってくれたら助かるわ。なんとなくなんだけど、早くしないと間に合わない気がする……」
先ほどより体調が悪い。胸のあたりが苦しいのだ。リリーは不安そうに私を見て、そして視線をさらに後ろに向けた。誰か来たようだ。
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