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第20話 聖女様の愚痴日記

 聖女の名前はサーラ様。降嫁した王女が生んだ王家の血を継いだ少女だ。当時17歳、聖女と判明すると、王家から王太子の妃候補として白羽の矢が立った。

 その当時、侯爵令嬢だったサーラ様には婚約者がいた。その婚約者とは両想いだと思っていた。ところがその婚約者は、サーラ様が聖女だと分かると手の平を返して、王家にサーラ様を差し出したようだ。日記のほとんどは元婚約者への恨み辛みだ。

 愛していると言っていた婚約者は、自分を差し出して、早々に可愛い婚約者を新たにつくった。人間が信じられない。あんな奴禿げればいい。聖女の魔法でどうにか禿げる魔法がつくれないか??などと真剣に書いてあったのを読んだ時は、サミエル大神官長様がいるのも忘れて笑い転げてしまった。

「ああ、サーラ様の日記ですね。それ、参考になりますか?確かほとんどが婚約者の悪口ではなかったですか?」

 呆れ顔でサミエル大神官長様が見てくる。確かにそうだ、日記の9割が愚痴だった。婚約者、王家、神殿に対するものもあった。ただその中に、精霊魔法について書いてある部分もあった。難しい文献を読むより、1割とは言ってもこちらの方が興味深いし読みやすかったのだ。


「フィーネ様、今日はもう帰ってはどうですか?顔色が優れませんし、もしかして何か体に不調があるのでは?癒しがいるようなら、特別に無料で私がしますよ」

「無料は、家訓で遠慮しているんです。大丈夫です。少し夢見が悪いだけです」

「夢見が?それは興味深いですね。どのような夢ですか?」

「それが、起きると内容を全て忘れているので、分からないのです。ただ、いい夢ではないと思います」

「なるほど、悪夢ですか。また何かわかったら教えてください」

 そう言って、手を私にかざした。明るい光が降り注ぐ。癒しの光だ。

「代金は、悪夢の内容でいいですよ。かなり魂が疲弊しています。気をつけてください」

「はい、ありがとうございます」

 

 サミエル大神官長様が悪夢の内容なんて興味ないことはわかっていた。でも心遣いがありがたかったので、お礼を言って帰って来た。確かに体が疲れている様に思う。

 癒してもらったので、少しだけ楽になったような気がするが、根本的な問題は解決していない。アレックス様が忙しくて夜に会えないのも原因だろう。私にとってアレックス様と一緒に眠ることは、魂が落ち着くだけでなく、彼の体温を感じて、鍛えた体にすっぽりと包まれて守られているような安心感があったのだ。

「ああ、それが無いのが不安だなんて、なんて贅沢になってしまったのかしら……」


「おはようございます、フィーネ。もしかして体調が良くないですか?」

 朝起きると、更に体調が悪くなっていた。本来なら休みたかった。でも今日は気になっていた魔法薬の授業、ミラーリア・ジョシュア先生の受け持ちだった。2日前にすれ違った時、フィオリーナの魂に違和感があった。それを確かめたくて、絶対に授業に出たかったのだ。

「リリーおはよう。ちょっと体調が悪いんだけど、どうしても魔法薬の授業は受けたくて……」

「わかったわ。そんなに魔法薬に興味があるのね。私も受講するから、体調が悪化したら遠慮なく言ってね」

「ありがとう、リリー」

 リリーには、魔法薬の授業が好きなのだと誤解されたみたいだけど、あえて訂正はしなかった。詳しく説明することも出来ないのだ。


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