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第196話 おかえりなさいアレックス様

「ウィリアム殿下はかなり抵抗したけど、結局ソフィア殿下に押し切られて今に至るんだ…」

 アレックス様が嘆息しながら会場の方を見た。私たちは少し離れた庭の東屋で、アレックス様の話を聞いていた。先ほどの会場の雰囲気ならソフィア殿下の思惑通りになったようだ。

「2日前に帰っていたのなら、教えて欲しかったです」

「そこはすまなかった。兎に角時間が無くて、先ほどのもほとんど打ち合わせなく進んだんだ。何とかうまくいって良かったが、本当にひやひやしたよ」

「そうでしたか。王妃様がどうなったか心配ですが、大丈夫なんでしょうか?」

「ああ、陛下はこのことを了承しているし、ウィリアム殿下とソフィア殿下も納得の上で婚約しているから、後のことは陛下が何とかしてくれるだろう」

 先ほどからずっとアレックス様は私の手を握ったまま話をしている。離してしまったら夢から覚めそうで、私もぎゅっと握り返した。

「何度も、君の夢を見た。その度に会いたくて仕方なかった。やっと会えた、もう離したくない、フィーネ少し身長が伸びたね。夢で見た時より綺麗になったし、髪も伸びた」

 そっと髪をすくって、アレックス様は私の髪に口づけを落とした。私はじわじわと頬が熱くなるのを感じて目を閉じた。そっと気配が近づいてくると唇が優しい熱で塞がれた。

「おかえりなさい、アレックス様」

「ただいま、フィーネ」

 私たちはお互い見つめ、そしてまた口づけた。


 卒業記念舞踏会の一件は、概ね好意的に受け止められ新聞や情報誌で報道されていた。新たに王子妃となるソフィア殿下は魅力的な方で、王妃様もやっと納得してくれたそうだ。

「あれからウィルに会っていませんが、元気ですか?」

 魔法騎士団団長に復帰したアレックス様は、忙しい合間に私を訪ねて来てくれる。同じ王宮内でも魔法研究所と騎士団では結構な距離があって、偶然会うことはめったにない。今は冬季休みで、本格的に出仕するのはまだ先だが、研修と称して研究室に通っていた。

「ああ、元気にしていたよ。ソフィア殿下とも馬が合うのか、あれはあれでよかったようだ。魔法騎士団としても鍛えがいがある」

「そうですか、それなら良かった…小説の中の駄目王子を演じさせてしまって、そのままイメージが定着しないか心配していました」

「そこはソフィア殿下が上手にまとめ上げたようだ。私たちは会場にいなかったから見てないが、舞台女優顔負けの演技力だったと陛下が褒めていた」

「それは見てみたかったですね」

「それで、フィーネ。俺たちのことを話さないといけないと思うんだ。戻って来てすぐに復帰してしまったから、忙しくて時間が取れなかったが今度の休みに家を訪ねていいだろうか?」

「はい、私は自由に出勤しているだけなので、アレックス様のお休みが決まったら教えてください。予定を合わせますね」

「そうか、ではまた連絡するよ」

 アレックス様はそのまま魔法騎士団へ帰っていった。私はそのまま王宮の端にある庭まで走った。


「遅くなってごめんなさい。待ったよね?」


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