表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/213

第194話 sideアレックス 帰還②

 翌日王が刺客によって暗殺されたと噂を流した。勿論王弟派にだけ伝わるようにした嘘の情報だ。午後になって王弟のネイサン殿が沈痛な表情で陛下に最後の挨拶にやって来た。陛下はお婆様に施された仮死の魔法薬によって死者となっている。ただし、耳だけは聞こえるようになっているそうだ…

 ネイサン殿下は陛下と二人きりで最後の別れがしたいと申し出たので、俺たちは外へ出た。会話の内容は記録用の魔石を隠してあるので、ばっちり記録に残る算段だ。

「兄上、ようやくわたくしの願いが叶います。死後の世界では身内を信頼しないよう気をつけてください。あなたは周りの助言に耳を貸さず、わたくしのことを庇ってくださいましたが、わたくしはあなたのことが大嫌いでしたよ。お人好しで、何のとりえもないのに長子というだけで父や周りの者に大切にされ、弟であるわたくしが得られないものを手に入れているあなたが…わたくし自らの手であなたを葬れなかったのは残念ですが、刺客の者に報酬をはずむことにしましょう」

 一人でそう言うと、トリアン王の頬に手を当て温度を確かめたようだ。冷え切った体を確認したネイサン殿下は、葬儀の時に来ると言ってそのまま帰っていった。


「陛下、目を覚ましてください」

 ミラお婆様が魔法の呪文を詠唱すると、陛下は青い顔で目を開けた。

「やはり皆が言うように、ネイサンが私を殺そうとしていたんだな…」

 目覚めた瞬間にトリアン王はそう言って溜息を吐いた。実はここが一番問題になったところだった。俺や周囲の家臣が何度進言しても、トリアン王はネイサン殿下のことを信じていたのだ。自分が呪われた事実は理解しても、その行為を指示したのが実の弟だとは思いたくなかったのか、頑としてそこだけは譲る気がなかったのだ。

 本当はこんな回りくどい方法を取ることなく、王弟を断罪できれば手数をかけずに捕縛できたのだが、誰が何と言おうとそこだけは頷いてくれなかった。

「じゃあ、本人に自白してもらえばいいんじゃない?記録しておけば、動かぬ証拠にもなるし」

 ミラお婆様が提案して、一芝居打つことになった。さすがにあの自白を聞いて、トリアン王もネイサン殿下を信じることは出来なかったようで、翌日には王弟派の貴族、そして王弟ネイサン殿下の捕縛が粛々と行われた。一応裁判はするが、証拠は充分そろっているので、みんな仲良く監獄行だろう。王弟派は一掃されたが、まだこの国には問題があった。


「さて、王弟派がいなくなったからと言って安心は出来ません。この国は周りを他国に囲まれているにも関わらず、軍事が充実しているとは言えません。いつ他国に攻め込まれてもいい状態です。今はミザリー国が甥を王配にする予定で後見していますが、このまま俺が帰れば状況は変わってきます。ですが、俺は帰りたい…」

 思わず最後に本音が漏れてしまったが、そこは仕方ないと思う。王弟派を粛々と裁判にかけ牢獄や僻地へ収監、左遷と色々している間に時間は過ぎ、卒業記念舞踏会まで10日を切っていた。

 カトリーヌ殿下は俺の事情を理解しているが、現状帰っていいとは言えない状況だし、王は王弟のことがあり精神的にまいっていた。出来ればこのまま隠居して、王子であるオーエン殿下が成人するまで女王としてカトリーヌ殿下に任せたいと思っているようだ。まさか本気で俺を王配に??と思ったが、侯爵家の次男で護衛騎士のセドリック殿がこの度の功績で叙爵されることになり、彼を王配にする方向で話が進んだ。

「ですが、国の情勢としてはやはりミズリー国との血縁関係は欲しいのです」

「あの、わたくしがお嫁に行ってはいけませんか?」

 それまで黙って話を聞いていた第二王女のソフィア殿下が立ち上がった。

「ソフィがですか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ