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第174話 sideエマ・アボット

 確かにそうだと私は思った。リリーもフィーネも特に学園以外で戦闘訓練や魔物に対峙する経験があるとは思っていなかった。先ほどは助けに行く流れが出来てしまったため反対しなかったが、いくら魔法学園の生徒だとは言っても彼女たちは素人だ。いきなり魔物に対峙して使いものになるとは考えていなかった。

 実は私は影だ。戦闘訓練、隠密訓練、魔物の知識、その他あらゆるものを小さい頃から叩き込まれて育った。フィーネたちに言ったことの半分は本当のことだ。アボット子爵家は闇魔法が得意な家系で影になる者も多いと…実はそれがそうではなくて、影になるための一族だということなのだ。

 勿論強制ではない。しかし小さい頃から叩き込まれた技術を生かすとなると影が一番手っ取り早い、それで影になる者が一族に必然的に多くなるのだ。

 私は薬草学が好きで、3年生に進学を希望していた。しかし、影になるのなら2年生で卒業して、王宮に出仕した方がいいと親に反対されていた。ところが第三王子の婚約者となったフィーネが、薬草科を希望していると分かり、側で護衛する任務に就くため、急遽私の進学が決まったのだ。その点はフィーネに感謝している。

 邪魔になる伯爵令嬢3人を早々に薬草科から追い出し、上手く友達のポジションを手に入れられたのも幸運だった。一生二人に私が影だと告白する機会はないと思うが、二人のことはそれなりに気に入っていた。


「う~ん、私は2回ほど魔物が溢れる中に突っ込んで行かないといけない場面があって、それで慣れてしまったというか…それに、さっきは2匹だけだったし、話が通じる頭のいい魔物だったから…」

「私は、フィーネと色々経験して、何となくかな」

 どうやら二人への認識を新たにしないといけないようだ。

「私も何となくですね」

 一応、私もそう言っておいたが、魔物とは訓練で小さい頃から対峙する機会があり、それなりの経験を積んできた。まあ、それを言うことは出来ないけれど…

「おい、お前たち、大丈夫か?魔物は??」

 茂みをかき分けて、ノア先生が顔を出した。急いで来たのか、葉っぱが体の所々についている。

「あ、ノア先生、すみません、僕たちがフェンリルの子供に怪我をさせて、親のフェンリルを怒らせてしまいました。スミス嬢が子供を癒してくれて、何とか親子で森に帰ってもらえました」

「そうか、それは大変だったな。詳しいことは後で報告書に書いてくれ。夕刻まで時間が無い。薬草採取を続けるか、このまま帰還するか、どうする?」

 男子3人組はちゃっかりと5種の薬草を採取していたらしく、そのまま先生について帰る選択をした。私たちは残り2種を集めながら戻ると先生に言って、獣道を進むことにした。

「エマはもっと大人しいと思っていたんだけど、見た目と違って度胸があるのね」

「え?そうですか…」

 リリーの言葉にドキリとした。先ほどは咄嗟に体が動いて、普段とは違って地が出てしまっていたようだ…

「そうそう、二人とも息ピッタリでカッコ良かったよ」

「フィーネこそ、見事な癒しだったよ。フェンリルまで懐くなんて流石聖女様!」

 二人は楽しそうに笑っているが、こちらは内心ドキドキだった。一族の中で落ちこぼれだというのは自覚している。闇魔法より風魔法が得意なのも本当だった。それでも、重要な任務だと影としてフィーネの護衛を任されたのだ。なんとしても1年間バレずに任務を遂行したい。聖女の誘拐は阻止しないといけないのだ。

「どうしたのエマ、疲れた?良かったら癒そうか?」

 腕を広げてフィーネが笑う。本当に可愛くていい子だ。そんな聖女をトリアンの王弟が狙っているのだ、絶対に阻止すると私は心に誓ったのだった。


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