第171話 薬草採取に行きます
ノア先生は宣言通り5日後に、薬草採取に皆を連れて行った。予定では今日中に森を出る予定だ。朝から夕方までに、指定された薬草の中から5種類を採取できたら決められた地点に戻り確認してもらう。2人以上4人以下で行動することが条件だ。私はリリーとエマと組んだ。
「危険なことはしない。無理であれば引き返すこと。各班に一つ魔石を渡すから、何かあればこれを使って危険を知らせてくれ。魔物も出るぞ、危険だと思えばすぐに逃げろ」
比較的王都に近い森だ。大型の魔物はいないが、中型の魔物はいる。勿論聖女の石碑のお陰で弱体化され、ほとんど被害はないが、繁殖期などは凶暴化する個体もあるので、その時期は基本森には入らない。今はその時期ではないはずだ。
「それでは、各班気をつけて行ってきてくれ」
「よし、じゃあまずはここを目指すわよ」
リリーが渡された地図を見て、森の中心を指した。丁度木々が少なく開けた草原地帯。草原に自生する薬草を採取するようだ。
「地図は私が見るから、フィーネとエマは通り道にある薬草を探してね。あと、魔物の注意もしなくちゃね。念のため獣道は避けて、比較的開けた道を行きましょうか」
私たちはリリーの後について、道の端にあるかもしれない薬草を探しながら歩いた。他の班の人たちも同じような行動が多いようだ。男子3人の班は、獣道をあえて選択したのか、途中からいなくなった。
「そうだ、エマは何属性の魔法なの?授業では魔法を使わなかったから、まだエマの魔法みてないわ」
薬草を探しながら、折角なので聞きたいことを話しながら歩く。昨日までは講習がほとんどで、実際に魔法薬を作る時点で、属性に合った魔法薬を作ることになる。学園に入るには最低2属性は持っているはずだ。
「3属性持っています。得意なのは風魔法で、あとは土と闇です」
「そうなんだ。闇は珍しいね。私は水と風、それと精霊魔法が使えるよ」
「私は火と土よ。得意なのは火魔法かな」
「代々闇魔法が得意な家系だそうです。私は余り得意ではないですが、一応使えます。闇魔法が得意な者は影になることもあるそうです」
「影…そうなんだ。確かに闇魔法は隠密にはもってこいかもね…」
「そうですね。なので一族の中で私は落ちこぼれ扱いです。薬草科を目指すのも、家族から反対されていました。ですが、薬草科に聖女のフィーネがいると知った両親から、今はそれほど反対されなくなりました。そこはフィーネに感謝しています」
「どうしてか聞いていい?」
「どうやら一族の誰かが影としてフィーネについているみたいです」
声をひそめて、エマが囁いた。私たちも声を小さくした。
「ええ??護衛じゃなくて、影まで?」
「内密にしてくださいね。今もきっとどこかで見ているかもしれません。なので、直接接触して怪しまれない生徒である私が、側に居れるのは都合がいいそうです」
「心当たりがないんだけど、何かしたのかな?」
「王宮のすることには何かしらの意味はあると思いますが、私には見当がつきません」
「まあ、気にしてもしょうがないから、今は気にせずに行きましょう。もうすぐ目的地の草原よ」
リリーが、大きな木の向こうを指してそう言った。今まで歩いてきたところには、薬草はなかったので、この草原で少しでも見つけておきたい。