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第16話 いきなりバレました

 二人で会場に入ると、開始時間ギリギリだったため空いている席は前方にしかなかった。目立ちたくはなかったが、仕方なくリリーと一番前の端の方の席に座った。一番前の中央の席には、第三王子が座っていると、こっそりリリーが耳打ちしてくれた。ちらりと見ると、金色の髪にサファイアのような瞳の美少年が座っていた。従弟だけあってアレックス様の小さい頃に似ている気がした。髪色が金にサファイア色の瞳、アレックス様と一緒の色だった。


 学園長の祝辞の言葉に続いて、来賓の方の祝辞があるようだ。なんと来賓席を立って壇上に上がったのはアレックス様だった。魔法学園一の魔法使いと言われている彼は、入学する生徒からすれば憧れの先輩だ。さらに美貌の貴公子なんて二つ名までついていると、これもこっそりリリーが教えてくれた。心なしか会場が浮ついた雰囲気になっている。女生徒はみんなうっとりアレックス様を見つめているように見えるのは、決して気のせいではないと思う。

 更に間が悪いことに、祝辞が終わったタイミングで私と目が合ってしまった。私に気づくと、アレックス様は蕩けるような笑顔を私に向けた。その瞬間、一気に私に殺気が集まった気がした。隣でリリーが短く悲鳴を上げた。焦ってこちらに来ようとするアレックス様を、笑顔で制した。今こっちに来るのは状況を悪化させそうだし、さらに視線を集めそうだ。

 アレックス様も雰囲気を察したのか、そのまま来賓席へ戻った。入学後の諸注意のあとは、各教室に向かうようだ。解散の声に生徒が立ち上がった。

「フィーネ、少し急いで歩くわよ。本当は走って逃げたいけど、廊下は走れないし、淑女は更に走れないし」

 そう言って、リリーはさっと私の手を引いて、ギリギリ歩いていると思える速度で、教室を目指して出来る限り急いだ。ここで誰かに捕まるとどうなるのか、想像しただけで怖い。

「アレックス様もこんな場面で、微笑むなんて、本当にもう……」

 リリーは歩きながら文句を言っていた。でも、決して私の手を離さず、教室まで守ってくれた。教室に着くと既に担任の先生が教室にいたため、二人でホッとした。入学の諸注意と連絡事項が終わってからは、クラスメートに質問攻めにあったが、このクラスにはアレックス様の婚約者をいじめようという雰囲気の生徒はいないようで、リリーと二人で胸をなでおろした。

「あ、チャーリー、こっちこっち」

 同じクラスの緑のバッチをつけた男子生徒をリリーが呼んだ。背が高く、チョコレート色の髪に優しそうな緑の目をした男の子だ。

「フィーネ、こちらチャーリー。ワトソン男爵家の長男よ。領地が隣同士で幼なじみなの。そして一応私の婚約者ね。フィーネのことを守れる人間が多い方がいいと思って。よかったら友達になってあげて」

「一応婚約者……。フィーネ嬢、よろしく。チャーリーと呼んでくれ。あのアレックス様の婚約者なんだって?俺ここを卒業したら魔法騎士団に入団したいんだ。俺にとって彼は、雲の上の存在、憧れなんだ」

「よろしく、チャーリー。フィーネと呼んでください。お友達なってくれたら嬉しいです」

「ああ、よろしくな、フィーネ」

 

 そのあとも教室で、仲良くなった数名の友達と和やかに談笑していたが、廊下から常に殺気だった視線を感じる。漏れ出す魔力に明らかな敵意が混じっている。

「どうしよう、このままだと教室から出にくいわ。出たとたんに囲まれそうよ」

 リリーが腕をさすりながら、どうしようかとチャーリーと相談していた。そのうち廊下側がザワザワと騒がしくなってきた。誰かがこの教室に来たようだ。


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