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第166話 卒業記念舞踏会

「お待たせいたしました。ウィル、今日はよろしくお願いいたします」

 王宮の玄関ホールで待ち合わせをしていた私は、迎えに来ていたウィルに微笑みながら淑女の礼をした。キャサリン様の王子妃教育の賜物で、最近の私は何処から見ても貴族の令嬢だった。今日の私は薄い桃色のドレスだ。髪はハープアップにして編み込み、そこにピンクトルマリンの宝石を散りばめている。侍女のミリアさんが春の妖精姫だと褒めてくれたので、自信をもってウィルの前に進み出た。

 ところがウィルはその場で固まったまま動かなくなってしまった。私は不安になって、声をかけることにした。

「ウィル?ウィリアム殿下、どうされましたか?」

「ああ、すまない。あまりにも綺麗で声が出なかった」

 私の手を取り、そのまま手に口づけを落とした。ウィルにその様なことをされたのは初めてで、頬が赤くなるのがわかった。

「あ、ありがとうございます。ウィルも素敵です。さすが王子様ですわ」

「う、んん、ありがとう、では行こうか」

 そのまま手を取り、馬車までエスコートされる。よく見るとウィルの耳が少し赤くなっているので、照れているようだ。周りにいる人たちの生暖かい視線が気になったが、そこは気づかないフリをした。


 学園内にある、舞踏会も開ける大きさの記念ホールにウィルと入場する。既にほとんどの生徒が入場した後だったため、皆の視線に緊張しながら進んで行った。今日の主役は卒業する2年生と3年生だ。目印に胸に赤い薔薇が挿してあるのが卒業生だ。

「皆がフィーネを見ている」

「いえ、きっとウィルを見ているんです」

「いや、君だと思う」

 二人でそんなことを言って、思わず笑い合ってしまった。周りからは仲睦まじいように見えているのか、いろいろなところから羨む声が聞こえてきた。

 

 ウィルは卒業生に向けて祝辞を送るので、会場で一旦別れた。私はリリーたちが待っている会場の端へ向かった。その間も終始見られているようで落ち着かない。

「ごきげんよう、リリー、チャーリー」

「ごきげんよう、フィーネ。そのドレスとっても素敵だわ」

「ありがとう、リリーのドレスも素敵よ」

「今日も注目されていたわね。最近王子妃教育の賜物で今では立派な淑女よ。可愛いフィーネが、マナーまで味方につけたんだもの、この評価も当然よ」

 リリーが少し興奮気味に言うが、私は照れくさすぎて赤面するしかない。会場の前では、学園長がお祝いの言葉を述べていた。この後ウィルが祝辞を言い終われば舞踏会が始まる予定だ。

 ウィルと一曲踊った後は、リリーたちと軽食が置いてある場所でおしゃべりをして帰る。久しぶりにゆっくり出来ると朝から楽しみにしていたのだ。


「フィーネ、お待たせ。さあ一曲踊っていただけますか?」

「はい、喜んで」

 王宮での王子妃教育のダンスも、時間があればウィルがパートナーをしてくれていたので、最近は安心感が更に増していた。今なら話しながらでも余裕で踊れる自信がある。


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