第163話 進学内定をもらいました
後期が始まってからは、さらに勉強に集中した。前期10位であったからと言って油断していたら、あっという間に追い抜かれてしまうのだ。そして、その努力は報われたようだ。後期も半分を過ぎた頃、進学内定者が発表された。
「うおっギリギリだけどいけた…魔法お披露目会、上位にいて助かった…」
チャーリーが内定合否判定書を見て、止めていた息を吐きだした。
「もう、だから教科も頑張りなさいって言ったのに…まあ、内定していて良かったわ」
リリーが呆れながらも、嬉しそうにチャーリーに微笑んだ。なんだかんだ言っても仲のいい二人だ。
「ところで、リリーとフィーネはどうだったんだ?」
「「それは勿論内定よ」」
3人とも無事内定を頂けたようで安心した。内定者は進学の課題提出、進学試験が免除される。残念ながら内定から外れた者は、課題、試験を突破して進学を勝ち取らなければならない。後期の半分がその課題に追われて終ってしまうことになるのだ。また2年生で卒業する者も、花嫁修業として王宮に出仕する者、官僚試験を受ける者など、それぞれ希望する進路に向けて努力している。
「専攻はどうするの?やっぱり薬草科?」
「うん、薬草科で決定かな。いろいろ薬草園でノア先生に教えてもらって、やっぱり興味があるんだよね」
「そう、では引き続き噂は消えないわね…」
「うん、そうなるのかな…」
最近も薬草園の禁断の恋を噂する人たちがいた。さらに、第三王子に溺愛されているのに浮気しているという不本意な噂まで広まっていた。
「まあ、事実無根なのは分かっているんだけど、こんなに広まると信じる生徒もいると思うのよね…」
「ああ、さすがに直接表立って言ってきたり、攻撃的な事はしないと思うがな」
「一部の熱狂的な信望者は分からないわよ…前例もあるし」
ミネルバ様に唆された、聖女の信奉者を名乗る男に攫われたことを言っているのだろう…あの時のことは今でもたまに悪夢として見ることがある。トラウマになっているのかもしれない。でも…
「今なら、返り討ちにしてやるわ。前より魔法も上手く使えるし、前みたいに攫われたりしないわ」
「そうね、そのために特訓したんだものね」
何はともあれ、目標にしていた進学内定をもらうことが出来て良かった。今まで時間に追われながら頑張っていたおかげで、アレックス様のことをあれこれ考えずに済んでいたのも助かったと思っている。きっと時間があればもっと悩んでいたような気がする。
「ねえ、日を改めてお祝いしない?3人とも進学内定出来たのだし、どこかに行かない?」
リリーが嬉しそうに提案してくれたので、私も頷きたかった。お出かけも出来ていなかったので、本当ならすぐにでも行きたかった…
「ごめん、リリー。実は、王宮の講師に明日から放課後の時間と休日を全部押さえられているの…」
「ええっ?全部??」
「一応進学内定が出るまで待ってくれていたんだけど、王子妃の教育があるんだって…」
「そうか、一応婚約者だったわね…そう言えばそうよね。フィーネは特に自由に育ってきた経緯もあるから、大変かもしれないわね…」
「うっ…今からでも婚約破棄出来ないかな…」
「無理でしょうね…一応婚約しているし、このままだと卒業式後すぐに結婚でしょ?王子妃教育は時間がかかるらしいし、今から始めてギリギリじゃないかしら?それでもお妃教育よりはマシだとは思うわ。頑張ってね」