表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/213

第159話 アレックスの奮闘記②

 国境沿いの森を進んで行くと、興奮した状態の魔物が次々に襲い掛かってきた。今までの人生で多くの魔物と対峙してきたが、このような様子の魔物は初めてだった。何かがおかしい…そう思った。清浄魔法で弱体化するまでは出来るだけ衝突を避け、国境を隔てる崖の側まで近づいた。

 崖の上でも戦闘が始まっているのか、時折魔法の光が見えた。俺は石碑の見える位置に移動して、魔物を倒しながらフィーネがやって来るのを待った。一目見たい一心だった。

 やがて石碑に走り寄る青い髪の少女が見えた。少し髪が伸びたように見えた。フィーネは石碑の周りに氷の防護壁を作り出した。完璧な氷魔法だった。フィーネは結界を強化するため石碑に清浄魔法を込め始めた。側にはウィリアム殿下の姿も見える。炎を帯びた剣を持ち、フィーネに近づく魔物を倒しているようだ。自分が知っている二人より随分魔法が上達したようだ。そう思うと、会えていない時間を思い知らされた。

 突然、氷の防護壁が消えた。きっと魔力を使いすぎて、防御にまで力が及ばないのだろう。それでもウィリアム殿下が、魔物をフィーネに近づけないように戦っていたので事なきを得ていた。やがて石碑が淡く輝きだした。結界が完成したようだ。これで魔物は弱体化されるだろう。そう思ってフィーネを見ると、彼女は石碑の横にへたり込んでいた。魔力が限界なのだろう。そう思った瞬間、フィーネに襲い掛かろうとする魔物が視界に入った。

「フィーネ!!」

 思わず叫んでいた。それと同時に雷魔法を発動して魔物を狙った。遠かったが何とか命中したようだ。フィーネの無事を確認してホッとしたのも束の間、その後の光景に愕然とした。フィーネが這いながら崖の下を見るような仕草をした後、そこに近寄ったウィリアム殿下がいきなりフィーネを抱き寄せたのだ。

「は?」

 愕然とする俺を置いて、フィーネを抱き上げたウィリアム殿下はその場を去っていった。


「アレックス殿!」

 俺を呼ぶ声にハッとした。そうだ、今は魔物の殲滅が先だ。なんとしてもこんなところ、出来るだけ早く片付けてフィーネの元へ帰りたい。俺は盛大に魔物に八つ当たりして、ほとんどの魔物を駆逐した。後に魔王降臨と恐れられたのは、フィーネには内緒だ。

 ほとんどの魔物がいなくなった後、俺たちは原因を解明するべく森の中を調査した。その結果、森の奥の洞くつで黒魔術の魔法陣を発見した。どうやらここから魔物は生み出されていたようだ。今はフィーネが強化した結界のせいで、効力は薄れているようだが厄介な代物であることは確かだ。この可能性を考えミラお婆様から小瓶を2本預かっていた。一つは血、もう一つは聖水だった。

 俺は血を魔法陣にかけ、その後に聖水で清めた。更にここに近寄れないように、洞窟の入り口を土魔法で塞いでおいた。更にここに近づいた者を捕縛できるよう、罠を仕掛けた。誰がこんなことをしたのか想像はつくが、証拠が何もなかったら追求しようがないのだ。是非罠にかかって欲しい。


 その後何もなかったように、王宮へ戻った。幸い怪我をした者も少なく、ミラお婆様にすぐに治療してもらえた。魔物被害はこれで当面心配ないだろう。

「そういえば、なぜお婆様は来なかったのです?魔物退治得意でしょう?」

「あら、やだ、老人は労わりなさい。現役ではないのだから、ゆっくりさせてよ」

 ドラゴンを平気で倒す人を労わる必要があるのか疑問だったが、その場で反論は控えておいた。魔物相手に疲弊した後に、お婆様と戦うのは避けたかったのだ。

「それで、意中の人とは会えなかったの?元気がないようだけど」

「少しだけ見ましたよ。それでいいんです、今はやるべきことがありますから…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ