第15話 トルカーナ魔法学園のクラスメート
「抱きしめてもいいかしら?」
少しびっくりしたが、きっとフィオリーナ様のことを抱きしめたいのだと思い頷いた。
キャサリン様はゆっくりと私を抱きしめた。胸がトクンと音をたてた。不思議と懐かしい気持ちになった。フィオリーナ様が喜んでいる気がした。
「ありがとう。フィオに会えた気がしたわ」
「私もなぜか懐かしい気がしました。嬉しいのだと思います」
「そう、そうね。私も前に進まないといけないと、そう言われた気がしたわ。フィーネちゃん、これからもあなたを娘の様に見守っていてもいいかしら?そして何かあれば頼ってくれるかしら?」
「はい、ありがとうございます。心強いです」
そして婚約発表するために婚約式が行われたのだ。実際は4歳の頃に婚約の誓約書を書いているのだが、あえてそれは伏せた。あの時は小さい私の代わりに父がサインをしたが、今回はしっかり私のサイン入りだ。
婚約式を終えて、私はスミス子爵令嬢であり、若き天才魔法騎士団長アレックス・アルダール公爵子息の婚約者フィーネ・スミスとして、トルカーナ魔法学園の門をくぐったのだ。
長い廊下を歩いていると、一人の少女が廊下に立っておろおろしていた。他の生徒は見て見ぬふりで横を通り過ぎているようだ。気になった私は少女に近づいて声をかけた。
「あの、どうしましたか?」
オレンジ色の髪に、少しそばかすがある可愛い少女だ。スカートを見ると黒い染みが所々についていた。白いスカートなのでかなり目立つ。少女は困り果てていて気の毒だった。
「あの、良ければ浄化魔法をかけましょうか?水属性の魔法はある程度使えるので。」
「え、本当に?助かります。みんな無視するから、心細く……て、あなたよく見たらめちゃくちゃ可愛いわ!!」
「は?あ、ありがとうございます??」
少女はキラキラとこちらを見ていたけど、入学式の開会時間も迫っていたので慌てて浄化魔法をかけた。我ながら完璧に浄化できたと思う。
「ありがとう、本当に助かりました。あの、私ローゼー子爵家のリリアンナといいます。名前を聞いてもいいかしら?そして是非お友達になって!!私あなたのような可愛い子が大好きなの、あ、変な意味ではなくて友達としてよ」
いきなり友達が出来たようだ。
「あ、はい、私でよかったらお願いします。スミス子爵家のフィーネと申します。よろしくお願いします、リリアンナ様」
「え、もしかして噂のフィーネ嬢?」
「噂ですか?」
「美貌の公爵令息にして、天才魔法騎士団の団長アレックス様のハートを盗んだ泥棒猫……あ、勿論私はそんなこと思ってないわよ、あくまで噂になっているの。その令嬢が今年トルカーナ魔法学園に入学するって、朝から他の令嬢が殺気立っているのよ。気をつけてね!!」
「泥棒猫……殺気立っているのですか……」
今すぐ帰りたい気持ちになったが、憧れの魔法学園にせっかく入学できたのだ。なんとかこの危機を乗り越えないと……
「大丈夫よ。生徒の数も多いし、今日すぐに身元がばれるなんてことないわ。そろそろ入学式の時間だから、一緒に行きましょう。そのバッジ緑だから、同じクラスね。フィーネと呼ぶわ。リリーと呼んでね」