第155話 ジョンソン辺境伯領に行きましょう
マルク-ル陛下から、秘密裏にジョンソン辺境伯領に行くことの許可がおり、精鋭部隊を貸してもらえることになった。事前にアレックス様から陛下への手紙にも、そのことが書かれていたようだ。
今回は魔物の討伐はほとんどないため、魔法騎士団から5名の騎士が同行してくれることになった。そのうちの一人は副団長のマックス様だった。知っている人が一人でもいるのは心強かった。さらに、その中に意外な人物まで混じっていた。
「なんで、ウィルがいるの??」
集合場所の魔法騎士団本部へ着くと、そこにウィリアム殿下がいたのだ。
『フィーネ、なんでこいつをウィルって呼んでんねん?』
「えっと、いろいろあって、今はそう呼んでるんだよね…」
魔法お披露目会の後、優勝したウィリアム殿下にお祝いを言うと、何故かご褒美を要求された…それがこの愛称で呼ぶことだったのだ。いまだに解せないのだが、愛称呼びにももう慣れた。
「そんな事より、どうしているのですか?」
ウィルの格好は、魔法騎士団の見習い生が着る騎士服だった。最近身長が伸びたのか、周りにいる騎士の人たちといても違和感はない。
「これも経験だと思って、陛下に同行出来るように願い出たんだ。前回は危険だと断られたが、今回は優勝したことも評価してもらって認めてもらえたんだ。だから、同行5名の内の一人は僕だ」
どうやら知り合いが2名に増えたようだ…
「そうですか、ではその間よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしくな」
『なんや、わいがおらん間にええ雰囲気になってないか?アレックス、大丈夫かいな??』
何やらチルチルがブツブツ言っていたが、皆の声に隠れてよく聞こえなかった。まあ、気にしなくていいことだろう。
転移補助魔石を使いながら8日かけて、ジョンソン辺境伯の領地に着いた。出迎えてくれたライリー・ジョンソン辺境伯はとても優しそうな雰囲気のおじ様だった。
「ようこそ聖女フィーネ様。今回は石碑の結界を強化するためにお越しくださりありがとうございます。明日石碑までご案内いたしますので、今日は屋敷の方でゆっくりお休みください」
にこにことした笑顔にこちらもにっこりしていたら、マックス様が緊張した様子で近寄ってきた。不思議に思って見ていたら、マックス様が緊張した声でジョンソン辺境伯に挨拶をした。
「お久しぶりです、隊長、いえ、ジョンソン辺境伯!」
「ああ、久しぶりだな。元気にしていたか、マックス。副団長を拝命したんだろう、すごい出世じゃないか」
「あ、いえ、自分は炎のライリー隊長に比べたらまだまだです!明日はよろしくお願いいたします!」
「おいおい、その名で呼ぶな。今は温厚な辺境伯で通っているんだから…」
「あ、すいません。昔を思い出してつい…」
「ははは…それと、ウィリアム殿下にまでお越しいただきありがとうございます。立派になられて幼少期に魔術指南役をさせていただいたことが誇らしいですよ」
「ライリー、久しいな。元気そうで何よりだ。あなたのお陰で着々と目標に向かって頑張っている。それと、今回は魔法騎士団見習いとして参加しているから、気を使わないで欲しい」
少し照れくさそうにウィルが言うと、ジョンソン辺境伯は嬉しそうに微笑んだ。後でマックス様がこっそり教えてくれたが、辺境伯は昔、魔法騎士団で火魔法の使い手として畏怖されていたそうだ。