第154話 お帰りチルチル
『ただいま、帰ったでぇ』
学園から帰宅すると、ベッドの上でくつろいでいるチルチルがいた。ほぼ一か月ぶりの対面だ。
「チルチル、心配してたんだよ。大丈夫だったの?」
『おう、まかしとき。なんもない、ことはなかったけど、大丈夫や』
「そう、それなら良かった。それで、あの、アレックス様は元気にしていた?」
いろいろな事が聞きたかったが、何から聞いていいか分からず元気かと聞いてしまった…確かにそれも気になっていた。いきなり王配候補で他国に行くなんて、私なら心細すぎる。
『おう、元気やったで、そう言えばあいつの伝言やったな…元気にしているってそれだけ伝えろって言われたんや。まあ、補足するなら、元気に精力的に動いとった、ほんま手伝うの大変やった…』
「えっと、何に精力的なのか分からないけど、元気なら良かった」
『そや、あいつんとこに、ミラとセイもおったで。補佐官してるんやで。3人で孤軍奮闘しとったわ。わいも手伝っとったら遅くなったんや』
チルチルはトリアン王国で起こっていることを見たまま伝えてくれた。どうやら王支持派と王弟支持派で争っているようだ。アレックス様はミザリー国をねらう王弟の公爵を叩き潰そうとしている最中で、出来れば半年後の婚礼までに何とかしたいと思っているらしい。少ない同志と手を組みミラ様とセイ様も巻き込んで水面下で戦っているようだ。
『アレックスは表立っては頼りない王配候補を演じとった。お手本はセイらしいで。そうすると皆警戒せえへんと色々喋るんやって』
「そうなんだ、それはちょっと見てみたいな」
『それでな、夏季休暇に東の国境、ジョンソン辺境伯領に行くことになったんや。国境に魔物が増えとって、それをなんとかせんと、戦争して聖女フィーネを奪うという公爵の主張に大義を与えることになるんや。魔物さえおらんなったら、戦争の大義がなくなるやろ』
「石碑の清浄魔法の封印よね。それって…出来るかな?」
『心配せんでも出来るで。今回は呪われてるとこちゃうし、一からせんでもええ。それにあの頃より格段にフィーネの魔力量は増えとる。自分でも自覚してるんとちゃうか?』
「そんなはっきりは分からないけど、今回の魔法お披露目会で結構手応えあったんだよね。運よくベスト4までいけたんだよ」
『それは凄いやんか。あの時死ぬほどの魔力を使った結果、体が防衛反応起こして魔力をそれ以上に蓄えようとしたことで、激的に魔力量が増えたんや。分かっててもみんな死にたないからせえへんけどな』
「なるほど…そうね、死んじゃったら元も子もないもんね…じゃあ、問題なく封印に清浄魔法を増やせそうだね。少しでもアレックス様の助けになるなら、喜んで行くよ」
チルチルから沢山アレックス様の近況を聞けてホッとした。カトリーヌ殿下と仲睦まじいなどと聞いていたら落ち込んでしまっていたかもしれないけど、その手の話はいっさい出てこなかったため、内心ホッとしたのだ。今はまだアレックス様が心変わりしたのではないと信じようと思った。
それからは前期試験に追われ、前期試験の結果に喜んだ。なんと総合評価10位に入っていたのだ。情報部からの試験情報のお陰で筆記試験がいい成績だったこと、魔法お披露目会の成績も大きく影響しているようだ。そして夏季休暇に入ってすぐに、私はアレックス様の力になるためにジョンソン辺境伯領に向かったのだ。