第153話 チルチルの奮闘記②
『そりゃ、最悪やな。それで、どないすんねん。アレックスはどうしたいんや?このままやったら、フィーネは3年の卒業記念舞踏会の後、ウィリアムと結婚するで。こっちは一回結婚したら離婚できひんで』
「そうか、ウィリアム殿下と婚約したか…」
『だからっ、わいの話聞いてたんか?フィーネが好きなんはお前やろうが。信じて待ってるんや。意地でもそれまでに帰らんかいな!!』
「帰りたいが、現状不可能な未来しか浮かばない…明らかに人材不足だ」
「そうね、今のままでは本当に足りないのよね…」
『わかった、国境の魔物のことはわいにまかしとき。もうすぐ夏季休暇や。丁度国境沿いに聖女の石碑があるねん。フィーネと行って清浄魔法追加で、結界の範囲を広げたるわ』
「なっそんな危険な事させるわけにはいかない」
『あほか、フィーネのことは大丈夫や。今無理せんといつ無理するねん。側におれんでも、少しでもお前のためになるんやったら、フィーネは喜んでするで。それにやることがあった方が、精神的にもええはずや』
「わかった、ではその頃に魔物討伐隊を派遣して、一気に殲滅する」
『そやな、そん時国境沿いにおったら、フィーネの姿が見れるかもしれへんな』
「……」
「正直助かるわ。それじゃあ、私はとっとと王様の呪いを解こうかしら。チルチルちゃんに何点か薬草のお願いをしてもいいかしら?」
『おう、まかしとき。材料調達は得意やで』
セイがミラを見て寂しそうにしている、指示を待つ大型犬のようだ。
「セイは…そうね、王宮の女官を何人か垂らし込んでくれると助かるわ」
「ミラ…僕は君一筋だよ…」
「はいはい、そうね、でも今は少しでも使える人材が欲しいのよ。手駒に出来る女官は貴重なのよ。私のために頑張って欲しいのよ。お願い、セイ」
「わ、わかった…」
相変わらず綺麗な顔だから、きっと女官はすぐに落ちそうな気がした。まあ、アレックスと同じような顔だが、色味が違い雰囲気が優しそうなので、女性受けはセイの方が上だろうと思った。
ミラに頼まれた薬草を届けて、その後もミラに頼まれたことをこなした。フィーネのことも気になったが、すでに魔法お披露目会までに戻ることは不可能だったので、少しでもアレックスがこっちに戻って来れるように出来る事をしておいた。
『じゃあ、一旦わいは帰るで』
「ああ、いろいろと手伝ってもらって感謝するよ。正直助かった」
『ええんや、あとは頑張ってや。あと、必ず決めた日に国境へ来るんやで』
「ああ、承知した。それとこれを陛下に届けてくれ。こちらからの封書は全て検閲されるから、手紙も出せないんだ。それと…フィーネには、元気にしているとだけ伝えておいてくれ。まだ何も出来てないから、確かなことが言えない…」
『そうか、まあ適当に言っといたるわ。じゃあまた来るかもしれんけど、頑張りや』
そう言って、姿を変えて飛び立った。小さい体は可愛いが、飛んで帰るには大きい体の方が圧倒的に早い。何かと手伝っていたら、すでに2週間を過ぎていた。そろそろフィーネが心配している頃だろう。まずは頼まれた手紙を届けに王宮の王の元へ向かった。それから同じ王宮にいるフィーネの元へ急いだ。