第152話 チルチルの奮闘記①
フィーネが落ち込んで食欲がないのが心配で、わいはアレックスの所に行くことを決意した。このままではフィーネが心労で倒れると思った。
当初2週間後の魔法お披露目会までに戻るつもりでいたが、予想以上に魔物が多く、調査しながら目的地のトリアン王宮に着いたのは、フィーネの元を離れて8日目だった。ほんま勘弁してほしいわ…
そこからアレックスにたどり着くまでに更に2日かかった。わいは可愛い小鳥さんのふりをして、王宮の使用人からお菓子をもらいながら根気よくアレックスを探した。
『だ~めんどくさい。何でこんなに探さなあかんねん!王配候補なら王宮で大人しくしとけ、ぼけぇ』
庭の端の木にとまって、いまだに会えないアレックスに文句を言っていた。その時、木の下でガサリと音がして、探している声がした。
「鳥…か?お前チルチルか??」
『うおっお前っどこにおってん。探したやろが、ほんま勘弁してや』
「何故ここにいる?まさかフィーネに何かあったのか?!」
アレックスは、慌ててこちらに近寄ってきた。どうやらフィーネのことを捨てたわけではなさそうだった。
『なんもないわ、フィーネは健気に頑張っとる。見てるこっちが辛くなるねん。食欲ないし、夜もよう寝れてへん、それでも一生懸命お前のこと信じて待ってんねん』
そう言うとアレックスは黙った。じっと何かに耐えているんやろうとは思ったが、そんなこと知るか。
「それでは、どうしてお前がここに来た?」
『なんも知らんまま待つんは辛いやろ。せめてお前の考えをフィーネに伝えて、少しでも心を軽くしたりたかったんや。このままやったらきっと壊れてまう…』
益々アレックスは辛そうな顔をした。やはり、まだフィーネのことを想っていそうだ。
『せや、フィーネから伝言があるんや。「待っています。あなたが直接私に別れを告げるまで、どんなことが起こっても信じて待っています」やって。健気すぎて泣いてまうわ』
「そうか…フィーネ。俺も出来れば早く帰りたい…」
『王配になるんやろ?フィーネが知って号泣しとったで』
「うっ」
『どうやって帰れんねん。結婚するんやろ?』
「うう…」
「チルチル、そこまでにしてあげて。このままだったら、この子使い物にならなくなって困るわ」
アレックスの後ろから声がしたと思ったら、知ってる人間が二人出てきた。
『おお、ミラとセイやないか。どないしたんや?』
「話すと長いんだけど、頼まれて今はこの子の補佐官みたいなことをしているのよ。アレックスったら単身ここに乗り込んだはいいけど、王宮のほとんどが王弟派閥になっていてね、いきなり身動き取れなかったみたいなの。たまたまそこに連絡したら、そのままスカウトされちゃって仕方なく補佐官しているのよ~」
どうやら何かしようと画策しているようだった。聞けば今も王宮中を歩き回り、情報を集めているようだ。
『もしかして魔物のことも関係あるんか?』
「あら、どうしてそう思ったの?」
『ここに来る途中、国境沿いに魔物がいたんや。それもかなりの数やった』
「そう、それも調べてるひとつね。本当この国問題が山積しているのよ。議会は王弟派ばかりだし、魔物は溢れているし、国王は呪われて寝込んでいるし、対抗できる貴族がいないし、王族の権力もお金もないし…」