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第14話 母の秘密

 そこにいた父以外の人間はみんな驚いていた。流石に父は知っていたようだ。もちろんアレックス様も初耳だった。曰く、母の両親は世間知らずで騙されやすい、良く言えば人のいい性格で、そのせいで何度か投資話で騙されたらしい。子爵家の財政は、母が17歳になる頃には火の車になっていた。

 そこに、ある商人がうまい話を持ってきた。怪しいと姉弟は反対したが、結局両親はその話にのった。無利子で融資すると言っていたはずが、気がついた時には利子が5倍になっていたらしい。払えないのなら娘を後妻に差し出せと、50歳を過ぎた商人は言ったそうだ。

 初めからその商人の狙いは、美しいと評判の母だったようだ。母は覚悟したらしいが、機転の利く2つ下の弟が盗賊に襲われたように見せかけ、母を逃がしたらしい。当初の予定では、弟が借金の目途をつけた時点で子爵家に帰る予定だった。しかし、潜伏していた村で母は父に出会ってしまった。逃亡から2年経って、借金の目途をつけた優秀な弟が姉に連絡を取った時には、おなかの中に私がいたらしい。

 自分の母ながら、結構過酷な境遇だ。そして、必死で借金の目途をたてたのに、姉が村で幸せに暮らして子供までつくっていたと知った弟さんにちょっと同情した。

「フィーネも知っているでしょう。よくお菓子をもって遊びに来ていたルークス。彼が実は弟で、あなたの叔父よ。今は両親に早々に引退してもらって、スミス子爵家を継いでいるわ。ルークスは優秀よ。お陰で今は借金も無くなって、安定しているもの」

「ルークスお兄ちゃん……が、叔父さん」

「スミス子爵なら、私も知っている。そうか、夫人は子爵令嬢だったのか。確かに所作が綺麗だった」

「まあ、アレックス様、もう昔の話ですわ。すっかり平民の生活に馴染みましたもの。ですから、もしフィーネが身分を気にするのなら、ルークスが姪であるフィーネを養子にする方法もありますわ。スミス子爵家としても、アルダール公爵家と縁を得ることはありがたいことですし。ふふふ」

「なるほど、それはいい提案だ。私は平民のフィーネでも気にしないが、社交界でフィーネに対する目が厳しくなるのは否めない。憂いは晴らして堂々と妻に迎えたい」

「ええ、そうですわね。出来れば可愛い娘が苦労することなく、社交界デビューして欲しいですわ。ルークスに頼んでもいいかしら、フィーネ」

 私は、頷いた。養子という響きにドキリとしたし、いつも遊んでくれていたルークスお兄ちゃんが子爵で、母の弟だと聞いてびっくりしたが、これでアレックス様に少しでも近づけると思ったら、どんなことでも受け入れたいと思った。

「養子になっても、フィーネは俺とアンナの子供だ。そこは変わらないからな。勿論嫁に行ってもな」

「お父さん、ありがとう」

 不安そうな私に、今まで黙って聞いていた父が言葉をかけてくれた。母もうなずいている。


 そして話はとんとん拍子に進み、まずはスミス子爵家と養子縁組をして、さらにスコット侯爵が後見についてくれた。スコット侯爵は私の中にある魂、フィオリーナ様のお父様だった。父は以前からこの事を知っていて、スコット侯爵家と情報を共有していたらしい。父は上司と言っていたが、街に駐屯している騎士の上が、防衛大臣であるスコット侯爵様だと聞いて違和感があったのだ。

 スコット侯爵夫妻にも婚約式の前にお会いしたが、こちらもびっくり、村で何度か会ったことがあったのだ。自分の娘の魂の生まれ変わりである私を見守っていたと言っていたが、狭い村だったので、こっそり見守ることが出来なかったらしい。私は、会う度にお菓子やリボンなどをくれる親切な夫婦だと思っていた。

「やっと自己紹介が出来るわ。スコット侯爵家のキャサリンです。あの、お願いがあるのだけれど……」

 キャサリン様は陛下の妹にあたるという。少し緊張して次の言葉を待った。


読んでいただきありがとうございます。

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