表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/213

第146話 アレックスの受難③

 事前に相談したいことがあるとだけ記した手紙を送っていたため、陛下とはすぐに相談することが出来た。その後、カトリーヌ殿下も交えて会談を行った。

「なるほど、2年前からトリアン王は病になられていましたか…ですが、2年ほど前に一度トリアン王に会ったのですが、その時はお元気な様子でした」

「はい、マルク-ル陛下にお会いして帰国後、和平の話がうまくいったと議会に報告し、それから少したってからでした。夜に急に苦しみだして、そのまま寝込んでしまったのです。王宮の治癒魔法師が治療していますが、2年経った今でも起き上がることが出来ていません」

「急に、か。それは気になるな。ねえ、アレックス。知り合いの魔女がいただろう、相談してみるといいね」

 陛下はさり気なく俺を見たが、知り合いの魔女とはお婆様のことだろう。確かに彼女なら何か出来るかもしれない。今は定期的に連絡をとっているが、そろそろ連絡が来る頃だった。

「わかりました、そちらは連絡が来次第対応いたします」

「それで、王配の件だが、さあ、どうしようか?ねえ、アレックス」

 あくまで陛下は俺から言わせたいらしい…現状手が限られていた。今すぐに打てる手は、言いたくないが仕方ないだろう。

「私が…婚約破棄して、王配になるのがいいと思います…」

「そうだな、婚約破棄したフィーネはウィリアムの婚約者にしようか。そうすれば醜聞にはならないし、王家が責任を持って彼女を守ることが出来る」

「ぐっうううう…」

 力が入り過ぎて変な声が漏れた。どうやらここに俺の味方はいないらしい。

「勿論、結婚するのは早くて1年半後の学園を卒業してからだよ。そうだな、それまでにこの件が解決すれば、フィーネは残念だけど君に返すよ。息子はフィーネが好きだから、このまま結婚させてあげたいけどね…さあ、どうかな?」

「善処いたします」

「そうか、難しい案件だからアレックスでもはっきり確約出来ないか。失敗すれば君はずっと王配のままだ。いつまでもフィーネを待たせるのは酷だよね。その時は腹をくくってトリアン王国で幸せになればいいか」

「……」

「それで、フィーネには自分で伝えるのかな?勿論事情は伏せて、婚約破棄のことだけだがね」

「いえ、彼女に嘘は言いたくありません。戻ってくる確約も出来ないので、そちらにお任せします。私が彼女の側にいない間しっかり守ってください。もし、彼女に何かあればその時は俺が敵になりますから…」

「はは、それは怖いね。勿論善処する。悪いね、いい叔父ではなくて。アーサーにも謝らないとな」

「臣下ですから、国のために尽くすのは当然です。どうぞ存分に命令してください」

「そうか、ではアレックス・アルダール。トリアン王国の王配になるよう命令する。これより先はトリアン王国の平定に尽力するように」

「はい、御心のままに。精一杯尽力いたしましょう」

 結局、フィーネの顔を見れば決心が揺らぐと思って会えなかった。会えば、婚約破棄の言い訳をしたくなる。嘘をつけば、二度と会えないような気がした。更に、間諜がいることもわかったため、接触は避けた。

 謁見の間でフィーネと一瞬目が合ったが、すぐに逸らした。不安そうな顔でこちらを見ていた。走って行って抱きしめたい気持ちを必死で押し込め、カトリーヌ殿下に微笑みかけた。舞踏会ではウィリアム殿下と踊るフィーネを心に焼き付けた。勿論気づかれないようにこっそりとだ。

 愛している、フィーネ。必ず君の元へ帰って来るから、それまで……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ