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第145話 アレックスの受難②

 あまりの内容に、のどの渇きを覚えた。ごくりと軽く唾を飲み込み王女の顔を見た。

「待ってください。そちらの国に他の王配候補はいないのですか?」

「残念ながら我が国に、王弟である公爵の伯父に対抗できる貴族はいません。勿論王配になれる器の者もいないのです。そこで、我が国と隣接しているジョンソン辺境伯に内密に相談させていただいたのです。戦争になれば、まず最初に開戦地になるのはこの辺境伯領ですから…」

「まさか俺を推薦したのは…」

「すみません、私がしました。あなたなら王配としても戦力としても申し分ないと。実際王配になる者は常に危険と隣り合わせです。あなたなら十分に対応できるでしょう」

 にっこりと微笑まれ、ジョンソン辺境伯に思わず殺気を放ってしまった。ジョンソン辺境伯は何もなかったように笑っていた…流石、辺境伯をしている御仁だ。これくらいでは怯まないらしい。

「ですが、俺には…」

 フィーネがいると言おうとして言葉を飲み込んだ。そんな事は承知の上でこの提案はされているのだ。戦争を回避するか、戦争するか、その判断の前では俺自身の気持ちなど些末なものなのだろう…

「返事は保留にさせてください。陛下に相談いたします」

「勿論です。ですが、噂だけは流させてください。国を離れている間に、王配の件を伯父に勝手に進められては困るのです。協力していただけますか?」

「承知いたしました」

 

 王都に帰還する間に、俺と王女殿下の噂は広がっていった。きっとフィーネの耳にも届いているだろう。王都を出立する前に、フィーネに俺は拒まれた。まさかこんなことになると思わず、帰って来てからゆっくり話し合おうと思っていたのに、このままだとそれも叶わない可能性が高かった。

「やはりあの時、無理やりにでも氷の壁を突破しておけばよかった…」

「どうしましたか?そろそろ王都に着くのでしょう?」

 皆疲れ切っていた。王都に着くまでに刺客に何度も襲われた。勿論全て排除したが、敵も相当焦っているようだ。このまま俺が王配になったら、トリアン王国の実権は手に入らないのだから…

「まず王都に着いたら、秘密裏に陛下に会っていただきます。正式な到着と謁見は数日後に行います。それまでに相談の上、結論を出します」

「わかりました。我が国のことで、本当に申し訳ございません」

 出会ってから一か月もたっていなかったが、ここまで来るのに何度も刺客に襲われ死線を越えて来た。そのせいかお互いに戦友のような心地になっていた。

「いえ、自国のことも関わっています。気にしすぎないでください。ここから王宮の魔法騎士団の本部へ飛びます。お付きの方一名以外は身を隠しておいてください」

「わかりました。では、護衛騎士のセドリックを連れて行きます」

 いつも王女の傍らにいる護衛騎士だった。いくら恋愛に疎い俺でも、この二人が互いに想い合っていることは分かった。それでも俺を王配にするというのだから、国のことを第一に考える王族とは辛いものだ…


「うわっ団長、帰りが早くないですか??」

 魔法騎士団本部へ3人で飛ぶと、丁度そこにいたマックスが驚いて声をあげた。帰還予定は一か月みていた。まだ予定より7日早かった。

「火急の用だ。すぐに陛下に相談しなければならない。この二人を誰にも会わさず応接室に案内してくれ」


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