第141話 夜会へ参加します
「そうみたいね。何故か私の所には聖女フィーネ様って書いてあった…貴族枠じゃなくて聖女としてみたいね…行かなくちゃダメかしら?」
「そうね、行かないとダメだと思うわ。エスコートならノア先生に頼んでみたら?」
「う~ん、でもまた禁断の恋って騒がれそうだし…。この学園の上位貴族の令嬢も参加するでしょ、ややこしいことになりそうで…」
「それなら僕がしてやろう」
急に背後から声がして、リリーと私は慌てて振り向いた。そこには本を抱えたウィリアム殿下が立っていた。そう言えばここは図書館の中だった…
「えっと…ごきげんよう殿下。なんのことでしょうか」
「だから、今言っていた夜会のエスコートだ。僕も出るし、丁度いいだろ」
確かに殿下となら禁断の恋ではない、でもだ、それはそれでややこしいことになりそうだ…
「でも、そんな、殿下にわざわざしていただくわけには…」
「遠慮するな。どうせ僕はいつも一人で出ているからな」
それはそうだ、婚約者のいない殿下が誰かをエスコートすると噂になるから…
「なんだ?気になるのか?言わせたい者には言わせておけばいい。アレックス兄様が動けないようだから、僕で我慢しておけ」
「動けない?」
「あ、いや、気にするな。では、当日は迎えの馬車を手配しておく」
「はい、お心遣い感謝いたします」
殿下はそのまま本を抱えて出口へ向かった。どうやら本を借りに来たようだ。
「最近、殿下もフィーネに優しいわよね。それはそれで怖いわね…気をつけてね。ご令嬢たちにまた目をつけられるわよ」
「そうね、益々気が重くなってきたよ…」
『夜会に行ったら、アレックスに会えるやろ?直接聞いたらええねん』
5日後、王宮から迎えに来た馬車に乗って、私は王宮の夜会会場へやって来た。入口の所でウィリアム殿下が待っていて、そのままエスコートされて会場へ入った。夜なのに煌々とシャンデリアが輝き、周りは昼の様に明るい。会場では皆が思い思いに談笑している。
ウィリアム殿下にエスコートされて会場へ入った私は、すでに後悔していた。視線で殺せるなら、何度か死んでいるだろう…令嬢が一斉に私たちに注目したのだ。
「帰りたい……」
「おいおい、これくらいの視線気にするな。お前はアレックス兄様の婚約者だろ、堂々としておけ」
「はい、出来るだけ努力はします」
「トリアン王国、第一王女カトリーヌ殿下及びアルダール公爵家アレックス・アルダール様」
入り口で係りの者が名前を読み上げた。会場にいたみんなが二人に注目する。カトリーヌ殿下は真紅の薔薇を連想させるような真っ赤なドレスだ。上半身はメリハリのある体のラインを引き立て、下へ向かって幾重にも布が重ねられ薔薇の花びらの様だ。アレックス様は魔法騎士団の白い礼服に赤いマントをつけている。長身のアレックス様と、女性にしては身長が高いカトリーヌ殿下はとてもよく似合っていた。
『フィーネ、大丈夫かいな。気合やで』