第140話 チルチル参上
家に帰ると、そこにはお菓子を食べながらくつろぐ青い鳥がいた…一か月以上音信不通だったチルチルだ。
「どこ行ってたのよ!遅いよ、ずっと、ずっと寂しかったんだよ。聞いて欲しいことが沢山あって、本当に遅いよ~チルチル~~」
『な、なんや?なんかあったんかいな…』
再び泣き出す私に、チルチルは戸惑いつつ話を聞いてくれた。私は自分の進路のこと、アレックス様との結婚のこと、出立前の出来事、そして最近の噂と今日見た光景を話した。
『わいがおらん間に、なんかややこしいことになってんな。そのお姫さん、トリアン王国の姫やって?丁度そこに隣接する辺境伯領にも行ってたんや』
「チルチル、今までどこに行ってたの??」
私は、チルチルが何処かに遊びに行っていると思っていた。どうやら違っていたらしい。
『封印の見回りやな』
「封印の見回り??聖女の石碑のこと?」
『そや、聖女の石碑は魔物が発生しやすいとこにあるねん。前回はルイス辺境伯領にある石碑が呪われたから封印し直したけど、それ以外の場所にもあるんやで。そこも1000年以上たってるからな。一応確認しに行ってたんや』
「そっか、たしかにルイス辺境伯領にだけ魔物が多いわけじゃないよね。それで、石碑はどうだった?」
『今のところ大丈夫や。ただ、そのトリアン王国の国境辺りに仰山魔物がおってん。あっちの国には聖女はおらんのかいな』
「聖女のことは知らないな…」
『そらそやな、でもそのお姫さん、国境越えて来たんやろ?魔物は大丈夫やったんか?』
「特に何も言ってなかった…と思う。実はちゃんと話聞いてなかったんだよね…」
遊学のためだと聞いていたけど、もし魔物が多く発生しているのなら、それどころではないと思うけど…
『アレックスも何も言ってないんか?』
「会えてないし、話も出来てない…謁見の時、一瞬目が合ったと思ったけどすぐに逸らされて…アレックス様はずっと護衛につくみたいだから、話すことも難しいかも…」
このままだと、どんどん悪い方へ考えがいってしまいそうで軽く頭を振った。信じると決めたのに、自分を選んでもらえる自信はなかった。
『まあ、アレックスがフィーネを手放すとは思えんけどな…お姫さんに乗り換えるとか、あり得んで…』
「チルチルは見てないから…本当にいい雰囲気だったんだよ…」
『まあ、直接聞かんとハッキリせんのや。気にせんことやで』
「うん……」
5日後に急遽トリアン王国の王女カトリーヌ殿下を歓迎する夜会が開かれると、王宮から招待状が届いた。
何故か私は聖女として招待を受けた。いつもならアレックス様がエスコートしてくれるが、今回は護衛も兼ねてカトリーヌ殿下のことをエスコートすると聞いた。それも招待状を届けてくれた王宮の使者から、伝言でそう聞いただけだ。
「はーーーっ」
「何??すごい溜息なんだけど…何か最近溜息しかついてないわね…」
「うん、王宮から招待状がきて、エスコートしてもらう人探さないとって思ったら、もう気が重くって…」
「ああ、歓迎会があるらしいわね。上位貴族には招待状が届いているみたいね」