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第139話 揺れる心

 王妃様に付き従って、王宮の謁見の間へやって来た。こっそり見ていたらいいと王妃様が言ってくれたので、久しぶりにアレックス様を見たいという気持ちもあって、そうすることにした。丁度柱の陰になる位置に立って様子を見守ることにしたのだ。

 重厚な扉が開かれ、トリアン王国の王女らしい人物をエスコートしてアレックス様が入ってきた。王女様はとても綺麗な人だった。スレンダーなドレスを着こなし大人な雰囲気で、隣に立つアレックス様と一対の絵の様だ。その立ち姿に周りの人も感嘆の声をもらしたほどだ。確か王女殿下の年齢は21歳、年齢的にもアレックス様と年が近い。

 入場の時、一瞬アレックス様と目が合ったと思ったが、私の勘違いだったようだ。その後こちらを向くことはなかった。


「ようこそお越しくださった。トリアン王国の第一王女カトリーヌ殿下。貴殿を歓迎いたします」

 陛下が声をかけると、カトリーヌ殿下は優雅に淑女の礼をして微笑んだ。そうすると一層華やかな雰囲気になった。

「マルク-ル陛下、急なお願いを快く引き受けてくださいまして、お心遣い感謝いたしております」

 チラリと隣のアレックス様を見て微笑むと、それに同意するようにアレックス様も微笑み返した。その仲睦まじい様子を見た私は、胸の辺りがズキリと痛んだ。

 そこからの会話は全く耳に入ってこなかった。多分何日間かの滞在を許すとか、護衛はアレックス様が務めるだとか、そんな会話だったと思う。

「おい、おいっフィーネ」

 私を呼ぶ声にハッとして顔をあげると、そこには心配そうな顔のウィリアム殿下が立っていた。

「もう皆退出したぞ。母上がフィーネを心配して、僕に探してほしいと言ったんだが大丈夫か?顔色が悪い」

「申し訳ございません。ぼんやりしていました。私もこれで失礼いたします」

「待て、その顔で帰ったら家族が心配する。少し僕に付き合え」

 そう言ってウィリアム殿下は私の手を引くと、応接室の様な場所へ連れて行った。従僕さんにお茶の用意をするよう伝えると、そのままソファーに座るよう言われた。

「先ほどの光景にショックを受けているのだったら、たぶん大丈夫だ」

「…何故そう言えるのですか…」

「ただの勘だ。だがアレックス兄様がお前を裏切るはずがないだろ」

「そんな自信ありません。王都を出立する前に、私はアレックス様に今は結婚できないと言いました…それで愛想をつかされた可能性だって…」

 そう言葉に出すと、それが真実のような気がしてきた。結婚を拒んだ私より、綺麗な王女様の方が余程アレックス様とお似合いだと、そう思ったら涙が止まらなかった。

「おい、泣くな。僕が泣かしたみたいだ」

 ウィリアム殿下は慌ててハンカチを取り出して、私の顔に押し付けた。私はそのハンカチごと殿下の手を掴んで号泣した。こんなに泣いたのは久しぶりだった。

「すみませんでした。泣いたら少しだけすっきりしました」

「そうか…こんな風に泣かれたのは初めてだ、まあ気が少しでも晴れたなら良かった」

 ハンカチはそのままくれるそうで、その後従僕さんの運んできたお茶を飲んで、王妃様の侍女さんが顔を整えてくれてから帰宅した。


『おう、久しぶりやな~ただいま、帰ったで』


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